馴れ馴れしい無の勇者の生姜焼きは美味い

 収納魔法は時間の進みが停止しているので、取り出したタッパーはほっかほかだ。蓋を開けると香ばしい醤油と、生姜のサッパリとしてピリッとした香りが顔を全体を包み込む。


 「クソ美味そう。いただきます」


 足でタッパーを挟んでてのひらを重ね、マイ箸を親指で挟み食に感謝し一口頬張った。


 「美味い!美味い!美味い!」


 少し甘めの醤油ベースに生姜がピッタリとはまっており、無駄に濃い味付けで豚肉の旨味を消す事なく調和し、味に文句つけ所なんて一つもなく最高に美味い。

 お肉は肩ロースの大きい一枚ではなく、豚バラの薄いもので食べやすかった。

 豚肉の臭みを生姜と料理酒が消しており不快感は無くちゃんと処理されていた。

 一緒に炒めてある玉ねぎも食感がしっかりとありシャキシャキとしている。

 誰でも作れるお手軽レシピだからこそ、一つ一つ丁寧に調理する事でひんが出て、味の違いが大きく現れている。

 米くれ米。あと味噌汁。今すぐその二つを所望する。

 これがまだ沢山あるとか幸せだ。


 「元気そうだな」

 「元気そう?美味しそうじゃなくて?」

 

 手料理を食べてもらった人への感想として違和感のある表現で僕は首を傾げる。


 「その料理ね、回復魔法に精神回復魔法を付与してあるんだ。一応魘うなされてたから精神のダメージを心配して今食べさせたんだよ」

 「なるほどな。だから元気そうだな、なのか」


 料理にまで魔法を使うのか。下処理や解体する時にしか魔法は使わないものだと勘違いしていたが、料理そのものに魔法を付与するなど聞いたことが無い。料理スキルを持つ者が作ると美味しくなるくらいしか知らなかった。

 よく見ると生姜焼きから魔力を感じる。素材からも多少は出るが、それ以上の魔力のだ。

 魔力が隠し味になっているのだろうか。これは創作意欲が湧くぞ!


 「ちなみに、前回友人が死に、死んだ魚の目をしていた君が急に元気になったのはケーキを食べてからだよ」


 意気揚々と話す無の勇者は、しれっと前回も魔法を仕込んでいた事を明かす。意外と気を使われており少し見直した。だが・・・


 「そんな遠回りにしなくても直接使えば良かったのに」


 実際に物質に魔法を付与するよりも、対象者に向かって使った方が何倍も楽だ。それなのにどうしてわざわざケーキや生姜焼きに付与したのだろうか。


 「いやーあの時のハルト君に使ったら斬られそうだなって。それに未来のケーキ食べさせれば好印象かなと」

 「あー確かに」

 「だろ!」


 無駄な手順を踏ませたのは、完全に自分のせいだった。今の勇者はだる絡みやろうだが、当時は不法侵入している顔を隠した不審者だ。

 そんな奴が魔法を向けてきたら、男の子を殺し憎んでいた自分への八つ当たりで、情なんてかける事無く斬っていただろう。

 だが今日は普通に魔法で良くないか?新しい世界を教えてもらったから別に良いのだが。


 「悪いな」

 「あの時は仕方ないよ。あそこまで気にしていたとは思ってもいなかったし。こっちこそごめん」

 「なんで謝る」

 「・・・何と、なく。あと不法侵入」

 「不法侵入はどうにかしてくれ。いつか間違ってぶん殴るかもしれないからな」


 実際に不法侵入されていたら気絶させて拘束はするだろうから、瞬発的に放った攻撃を当ててしまうかもしれない。


 「怖えー。今度からはリビングから念話で起こすよ」

 「寝てる想定なんだ。てか不法侵入辞めろって」

 「はいはい。あっ!モンスターの素材ちょうだい」

 「話逸らすな」


 思いついたかのように素材を要求する無の勇者に、イラつきながら収納魔法を重ねて渡し今の所依頼は完了となった。

 残ったダンジョン攻略の動画投稿は期限が無いのでぼちぼちとやらせてもらうつもりだ。


 「しっかりと受け取りました。じゃあそろそろ行くから」

 「忙しいな」

 「まぁね。やる事が多くて大変だよ。これも世界を救う為だ」


 素材を受け取るとすぐに出発するらしくら一言誇らそうに語り、何かを考えながら指を折り同時に転移の魔法を発動させている。


 「よし決めた!」


 考え事は終わったらしく、無の勇者は僕に向かって別れの挨拶をする。


 「次の依頼の時来るから楽しみにしといて。あとちゃんとご飯食べて豆腐メンタル治してね。ハ・ル・ト君。じゃあね」

 「死ね!」


 最後の最後までいじりやがってと、最速で中指を立て物騒の別れの言葉を告げてやった。その時の表情は多分笑っていただろう。

 記憶の限りだとまだ会って二回目なんだよな。馴れ馴れしすぎだろコミュ力お化けが。

 



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