本物の勇者様は可哀想
「それでいつから居たんだ?」
「まだ疑ってる!?」
一度謝られたのにまた疑われていると勘違いした無の勇者は、過剰なモーションではなく素の驚きを見せ女の子の声で発した。
僕からすると疑わしいが、自分の力で無の勇者の潔白を証明した為、ただの悪夢だと思う事にして聞いただけだ。
「いや疑ってない。普通にいつからか気になっただけだ」
「それなら良かった」
疑ってないと聞くと、ほっとして肩の荷を下ろし通常の声に戻った。
「いつからかって言われると、そりゃハルト君が
今度はやれやれと疲れたような仕草を見せて無の勇者は肩を落とした。
以外に
「もしかして僕を呼んでくれたのも」
「そりゃ
夢の中で名前を呼び現実へ連れ戻し助けてくれた声は、今思うと無の勇者だったのかもしれない。はっきりとは思い出せないが、似たような声だったような気がする。
「ありがとう」
「何それ!?気持ちわる!」
「死ね!」
「危なっ!殺す気か!」
素直に感謝を受け取らない無の勇者へそこそこ本気の拳を振ってじゃれ合い、必死で避ける姿は面白く大笑いした。今の僕の顔は悪魔のように見えるかもしれないな。
「まじで死ぬから辞めて」
ふらついて本当に死にそうで仕方なく止めてあげた。
細かく何度も息を吸い、膝に手を置く無の勇者は散歩帰りの犬に似ているが、可愛いさは全くない。
勇者とは思えないだらしない姿に落胆し、世界を守る為に鍛え方から教えないといけないのかと思うとため息が出る。
「それでも勇者かよ。よくそれで俺が居たら百パーセント勝てるとか言えたな」
「私前衛メインじゃないし!
何故かまた女の子の声に変わり、《す》拗ねてしまった。声が女の子なのでつい夏希達にする口調で謝ってしまったが、男だったと思い出し元通りに修正して話を戻す。
「ごめんね!そんなつもりじゃ無かっ、たんだけど。そもそも無属性以外の魔法でも多少なりとも使えるだろ」
「はぁー。本当にハルト君は勇者を知らないんだね。よくそれで勇者を名乗れていたもんだよ」
「はぁ?どういう意味だ!」
急に過去の汚点を馬鹿にされてイラつき、ぶっきらぼうに問うと勇者について衝撃の事実が明かされた。そこで自分が勇者と全く違う生き物だと理解する。
「勇者は選ばれた属性以外の魔力回路が消滅さて、一属性しか使えなくなるんだ。だから僕は攻撃魔法の少ない無属性しか使えず、戦闘能力が低い劣等生って訳だ」
「まじ!?」
「まじ!」
「やばくね」
「まじやばい」
「どうやって戦うん?」
「身体強化と武器魔道具作成でめっちゃ作って戦う」
「辛くね」
「めっちゃ辛い」
「頑張れ。属性魔道具作る時は力貸してやるよ」
「ありがとう」
可哀想な属性しか使えない、落ちこぼれな勇者の頭を撫でて
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