夢からの目覚め

 視界が大きく変動し女魔族を見下ろす程に伸びた身長は、二人との間の距離が短く感じ強く違和感を覚える。

 自分の見えた手には子供の丸くふっくらした指ではなく、ほっそりとして細長く伸び男と違うキメ細やかな肌で、女性と変わらないくらいに綺麗だった。


 それもそのはずで、ハルトは元々父親より母親からのDNAを色濃く受け継ぎ、成長していくに連れて幼さで隠れていた美形が、前へ主張してきたのだ。


 急に悪魔が現れ警戒していた女魔族は、体が成長した事に驚き意識を戦闘から外した。

 その一瞬を見逃さなかったこの体は二人の距離を反応すらさせる事無く詰め、女魔族の体を剣は抵抗なく切断する。


 「人類の仇晴らさせてもらった。後はお前だけだ」


 成長した僕は魔王に向かって殺意の籠った剣先を向け大人の声変わりした深いトーンで宣言をした。

 そこで視界にノイズが入りまた暗闇に包まれる。二度目の世界が終わり、今度はどこに連れてかれるのだろうと暗闇の中で待機をしていると、一行いっこうに新しい場所へ変わらず閉じ込められてしまった。

 魔法を使おうとしても何も発現せず、ただ光も地面も何も無くただ浮いてるだけの世界から抜け出せず、軽く焦りながら目覚め方を探す。


 「・・・ルト!ハルト!起きろ!目を覚ませ!」


 暗闇の遥か遠くから名前を呼ぶ声がする。

 その声は今までの流れから負の始まりを表すもので、悪魔のささやきなのではと疑ったが、何となく悪意は無いと感じる。だから危険と分かっていても手を伸ばし、木漏れ日のような小さな光へ助けを求めた。

 

 何かに掴まれる感覚と同時に現実へ連れ戻され、バッと体を無理やり起こし息を切らせながら周りを見渡して家族を確認する。

 そこにはスヤスヤと幸せそうに眠る皆の顔があり、体を起こした事でお腹の上で寝ていたリンが丸まってるので転がり、ベットから落ちて壁にまで進んでぶつかりようやく停止する。


 ダメージを受けた精神がリンのおかげで回復していくのを感じ、ベットに戻してあげる為立ち上がると、寝ていた場所には見て分かる程大量な寝汗が染み込んでいた。

 

 「転がったねー」


 ベットの気持ちの悪い寝汗を触り確認していると、背後からは声が聞こえ振り返る。するとそこには壁に寄りかかっている、白いロングコートの人物が居た。


 「いつからそこに!?」


 咄嗟に大きな声で出してしまい、無の勇者からは唇に指を置いて注意受けてしまった。

 そのまま無言で上を指さして移動をお願いされ、屋根へ飛び上がりやっと声を出せた。

 

 「二週間ぶりだね。ダンジョン攻略お疲れ様」

 「どうも。それでいつから居たんだ?」

 「え!?もしかして疑ってる!?辞めてくれよー」


 無の勇者が言った通り、この悪夢を見たタイミングで横に居たのは怪しく犯人ではないか疑っている。少し威圧するように詰め寄ってやると、おどけるようにしては笑っていた。


 「早く答えろ」

 「おー怖い怖い。何もしてませんよーだ。うちだって優しさくらい持ってるんやからね!せっかく助けてあげたのに!」


 無の勇者は幼い女の子のような声を出し、腰に手を当てて怒ったような仕草でそっぽを向いてしまった。体格以外の声や動きは様になっており、それが余計に気持ち悪く見える。

 ただ魔力の揺らぎから嘘を着いてない事は分かった。

 

 「ごめんごめん。それ本当に気持ち悪いし辞めろよな。前も一人称がバラバラだったし何なんだよ」

 「それはすまん。これは色んな人に変装するから癖でな。今は女の約だから出ちゃったんだよ。気にするな」


 そう言って自分の体へ魔法を使い、実際の演じてる役の女の子だと思われる姿になり、フードを外しピースして見せてくれた。そしてすぐにフードを被り、元の大人サイズに戻る。


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