魔王お前だけは許さない

 ダンジョンの周りにあった街は荒地になっていて痕跡すらも見当たらない。

 地平線にはあれだけ栄えていたのに、ビルやスカイツリー等大きな建造物の破片すら残っておらず、現実が幻のように思える。時代が逆戻りしているようだ。

 

 「皆は何処に?家族はリン達は?美雪先生や夏希にリアムは?」


 そこでやっと都市ごと消えた人々に頭が回る。生死は確認出来ていないから、皆は避難したんだろうと短絡的に考えた。きっと見えない地平線の奥に隠れているのだ。


 「何が起こった設定なのだろうか?」


 自然災害があっても破片一つ見つからないなんておかしい。

 人為的なら昔に分解させるスキルを持つ者が居り、強力で魔力消費が多く使い勝手の悪い似た力で、魔王クラスが荒地の端から力を使うくらいしかない。


 だが都市を荒地に変える破壊衝動を持つ犯人が、端から端まで丁寧になんて思えない。

 現実離れしすぎてこれは夢だとはっきり分かり、少し前の二の舞を演じ飲まれる事は無さそうだ。有り得なすぎる。


 成長した僕はダンジョンの中に入って行く。ダンジョン内はこの前入った時とは別物になっており、内部構造は変わっていないが襲ってくるモンスターが違う。

 初層から一度の戦闘に複数体が同時攻めて来る。そして一体一体のモンスターが強く、ゴブリンキングより少し弱いか同等くらいだ。

 そんなモンスター達を成長した僕は、歯牙にもかけず一太刀で沈めていく。現実の僕では複数体倒せても楽々とはいかないだろう。


 「雑魚どもが」


 これは僕が発そうとした言葉ではない。口が勝手に動いたのだ。 サクサクと殺す体は無駄に力が入って筋肉が強ばっており、正常な戦い方ではない事が手に取るように分かる。

 そんな状態にもかかわらず、あっさりと最終階層のボス部屋までやってきて大きな扉を開く。


 「お久しぶりだね最強の勇者様。いや、今ハルト君、だったね」


 そいつはボス部屋の最奥中央で椅子に座り不敵な笑みを浮かべ、馬鹿にしたような態度で名前を呼んでいた。


 「お前は絶対許さない。人類全てを殺した魔王お前だけは絶対に許さない!」


 成長した僕が全力で恨み、魔力を溢れさせて一瞬で加速し力任せに剣を振る相手は、前世で殺し損ね弟子に辛い運命を押し付けた魔王そのものだった。


 「そう怒らないでくれよ。そもそもやったの私じゃなくてこの子だからね」


 振り下ろした剣は、魔王の仲間と思われる人間を殲滅したと訂正された女魔族の、強化された爪に正面から止められた。

 その女魔族は美しく惚れてしまいそうな容姿を持ち、何故か懐かしい気持ちにさせてくる。


 「そいつをやれ」

 「かしこまりました。対象を殲滅します」


 人間味の無い設定した言葉をなぞるように話す女魔族は、黒い魔法の弾丸を大量に生産してタイミングをずらして狙撃してくる

 後手に回った体は、避けながら切り落とすがその隙を狙われ、女魔族に接近を許してしまい後方からの魔法と体術の近接で、実質的に一体二になってしまう。

 さばききれなくなり、腹を爪でえぐられて一度バックステップをし、発動速度重視でファイヤーアローを使い魔法を打ち消して逃げる。


 「クソ!無理か!」


 悪態を着きながらヒールで腹を治し呼吸を立て直す。脳内では今のままでは勝てないと分析をしており、数段のギアを上げると成長した僕がいくつかの選択肢から一つを選ぶ。


 「契約!十年後の肉体と戦闘能力。代償全魔力」


 そう発すると目の前には時空の扉が開き、小さな悪魔が飛び出てくる。悪魔は真剣な顔をして心配をしてきた。


 「本当に良いのか。一生魔力を作れない体になるぞ」

 「どうでも良い。どうせ魔王を倒したら死ぬ」

 「分かった。絶対に倒せよ」

 「当たり前だ。物好き悪魔が」


 悪魔は片腕を伸ばして拳を要求してきた。その要望に答えて体は拳同士を重ねて別れを告げた。

 寂しそうにじゃあなと背を向けた悪魔は、振り返る事無く時空の扉を開けて帰っていった。

 すると闇の魔力が発生し体を包み、辺りには骨が折れる音が数え切れない程に鳴り響く。

 音が無くなり闇の魔力が霧散し、内側から出てきたのは十歳くらいの男の子では無く、大人になったハルトだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 コロ助での休載の為にしばらく注目作品にも乗らなく辛い状況です。

 励みにもなりますので、全力でフォローや☆にレビューお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る