何も無い荒地には一本のダンジョンがある

 フェストと家を出ると視界にノイズが走り一度暗闇に包まれ、砂埃の舞う荒地へ場所が切り替わった。

 そこでさっきまでが夢だった事を思い出し自分の異常さに気付いた。

 夢に飲まれて完全に現実を忘れ、あの世界が本当の現実だと疑いすらもせず、ありのままを受け入れるなんて今思うとおかしすぎる。


 ただそれだけあの状況が自分に辛すぎて、思考回路を切断し何もかも捨ててしまいそうになっていた。もし場所が変わっていなかったら、復讐の為に生きようとした廃人に、現実でもなっていたのだろうか。

 刺激が強すぎて一概にありえないとは言えない所が怖すぎる。夢で廃人になるとか笑えない。

 次は夢だと意識し続ける事で、しっかりと現実ではないと割り切れるだろう。なんなら手に夢とでも書いてやろうか。


 「今度はどこかな?」


 血塗ちまみれ家族の次は何かなと予想し、周りへ情報を探してみても意味は一ミリもなかった。だってどこ見ても一面荒地なのだから。一応ど真ん中にダンジョンが一本と、所々に枯れ木や草があるがそれ以外は何も無い。

 日本でこんな場所があるのだろうか。いや絶対無い。あるとしても広大な土地を持ち手が回らない国や、人間や生き物が住む場所としての活用を諦めたかのどちらかだ。


 「どっちに進もうかなー」


 ダンジョンへ向かうか、地平線上では見えない街や村を探すか。村ってここ地球だよな。まずそこから怪しく、見た感じ化学の発展していない前世の方が近い。


 「見えない場所を目指すより、アンパイ見えるダンジョンだよな。そう思うよね皆!」


 相変わらず一人じゃないと思い込んでおり、無意識に皆へ話しかけていた。頭を触っても胸ポケットを覗いても誰も居ない。


 「また一人か。寂しいな」

 

 何も無い荒地をダンジョン目掛けて歩き数分、飽きた。そりゃ飽きるよね。だって何も変わらないもん。地獄だよ地獄。早く目よ覚めてくれ。


 最初は歩きながら、現実とは違い成長していたすらっと伸びている腕や足を見て心を踊らせていた。

 見た感じ大体十歳くらいだと思う。鏡を出して全身を見ようとしたが、魔法を使ったり足を止めることが出来ないらしく、体が言う事を聞いてくれなかった。

 考えもしなかったのであまり覚えてないが、前の場所でも体が成長していた気がする。もしかするとこの二箇所は時間的に近いのかもしれない。


 追加で十分くらい歩いた所だろうか。ある事を思いついた。かっこ良いからと誰にも言わず作り上げたバイクが収納魔法にある事を。

 現実の僕はバイクに興味を持っておらず、作ろうとともしなかったので、この記憶は夢の中の物だ。


 さっさとバイクを取り出し、意外とかっこ良いなと未来の僕へのセンスをを褒めてまたがろうとするが、足が地面へ届かず宙ぶらりんで乗りこなせない。

 大きくため息を吐き、たまに変なミスするんだよなと自分に呆れつつ、無属性魔法のアジャストを使い体に合わせてまたがり直した。


 残念だが収納魔法にヘルメットは準備していなかったらしく、ちゃんとフル装備で楽しみたかったのにと二度目のため息を吐きバイクを発進させる。


 バイクはどんどんスピードを上げ、風を切っていく感覚が気持ち良く最高の気分だった。

 こんなちびっこがバイクを乗りこなすなんて現実ではありえないので、全力で楽しむ事にしてスピードを限界まで上げてみると、乗り始めとは違う風を感じる。これはこれで良かったのだが危険を感じ程々のスピードに落とした。

 ついでにこの前テレビで見たバイクのウィーリーという技が気になり、やろうとしてみたが体が言う事を聞かなかったので余計な事をするのは辞めた。


 二、三時間荒地を走りガソリンが四分三無くなった所で、やっとダンジョンに着いた。

 視線の先くらいなら行った事ない場所でも、転移で移動出来るのにどうしてやらないのだろう。魔法が一切禁止では無いし、何ならバイクの走る地面を舗装したり、砂が当たらないようにしたりと少しだけなら魔法を使っている。

 魔力を温存したいのだろうか?それなら魔石で回復すれば良いのに、夢の中の自分はよく分からない。


 バイクをダンジョンの前に止め、徒歩で近くに寄ってみると入口にはプレートが貼ってある。

 このプレートはどこの国にもある物で、ダンジョンの名前と難易度が書いてある。

 砂埃が被り名前が良く見えず、プレートを持ち上げ手で払って確認してみる。

 そこには東京ダンジョン、難易度初級~上級と書かれていた。


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