絶望は最強を復讐の鬼へと変える
「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、ミサト、起きて。冗談だよね。僕が皆を置いて居なくなったから、驚かそうって奴だよね。驚いたよ。もうしないから。早く起きて」
動かず返事の無い家族に何度も声をかけて体を揺すり、どんなに謝っても誰一人として許してはくれない。
血溜まりの中に数滴の水が落ち小さな波紋が広がる。
何も出来ない僕は夢の中で成長したミサトを抱きしめた。
その感触はいつもの暖かく押し返してくる柔らかさは無く、熱を奪われる感覚と体が抵抗せず僕の力のままに曲がり内側に空洞を感じる。
そこで出るのは血と内臓であって声はではない。
「起きて。起きてよ。何で起きないの!もう良いから。謝るからさ、さっきみたいに怒ってよお母さん」
僕の体をからは、聖属性の魔力が街全体へ広がりその全てを注ぎ込んだヒールを使った。
生きた体の傷や欠損ならば、地球の半分近い怪我人を完治する事が出来る魔力量だ。余波に当たるだけでも古傷ぐらいなら消えるだろう。
だが目の前では誰一人穴が塞がらない。
その結果は脳が否定した家族の死を受け入れてしまう。
「どうして、また一人に」
魔力を全て放出した代償に頭に痛み走る。
精神が擦り切れていきどうしてか前が見えず、抱きしめる軽くなったミサトからは何かが
ダンジョンの方向からは、叫び声や爆発音にサイレンと外はパニックになっているがどうでも良い。
「ハルト、ごめん。助けられなかった」
背後からはいつの間にかフェストの声が聞こえる。通常時なら聞き逃す事の無い足跡も今は耳に入ってこない。
「フェスト大丈夫か!?」
唯一助かっている事が分かり、頭が麻痺して良かったと喜びを感じ振り返ると、フェストのお母さんと同じくらいの大きいサイズになり毛が真っ黒に染まったフェストが無表情で立っていた。
「フェスト、なのか?」
「助けられなかった。皆僕を死なせないように」
そう
「この指輪」
フェストが指輪を肉球で軽く触れると魔法が発動し、中から沢山の服やコスメが流れ出てくる。
この指輪には美意識の高く見た目を気にするラウに、物が多くて大変だろうと収納魔法を付与しようと考えていた一点物なので、フェストの言葉からして誰の遺品なのか分かった。
流れ出た服やコスメを見ると大量で、こんなに買わされたのかと無い記憶に懐かしむ。一つ一つ自分の収納魔法に入れ直し端まで行くと、それまでとは全く違った大きい物が転がっている。それは血で染ったリンの爪だった。
バタバタ下手くそな急ぎ足で向かい、僕の体と良い勝負の爪にそっと触れて抱きしめると、発光して見慣れた剣に変わっていく。
「リンが、お姉ちゃんなのに守れなくてごめんねって」
長い付き合いで、友人ではないが下級種族の僕と一緒に居てくれた、友人のような存在と思っていたリンの最後のメッセージは、擦り切れて痛みの分からない心が踏み砕かれて、ボロボロを通り越し粉々になって風に舞っていく。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
家族を殺した名も分からない奴への復習を誓い、収納魔法から前世で使っていたフルスペック装備を今の体に合わせて着替え、黒のロングコートを上から羽織りフードを深く被る。
「フェスト。犯人の場所は分かるか?」
「リンとラウのなら分かるけど・・・」
「気にするな。教えてくれ」
「うん。じゃあ乗って」
言われた通り大きくなった背中の上へ跨り、感情の欠落した小さい少年は唯一残った復讐の思いに動かされ大虐殺の旅に出る。
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