明晰夢と染まる家族

 ここはどこだろう。

 ベットで寝ていたはずなのに何故かよく分からない場所で、硬いアスファルトの道路にうつ伏せになっている。


 明晰夢めいせきむ。睡眠中に夢と理解して意図的にコントロール出来る夢の事。

 僕は初めての明晰夢を体験中なのか。

 もしよろしければもっと楽しそうな明晰夢にしていてもらいたいが、残念な事に無理やり場所を変えるような事は出来ないようだ。


 立ち上がる為に食いしばると口の中には砂が入っており、ジャリジャリと音を立てて不快な気分にさせる。よろしくないが申し訳なく思いつつ、排水溝に唾を吐き捨て水を作りうがいをした。


 「とりあえず帰ろう」


 現在地は知らないが、近くにダンジョンが見えたので大体位置の推測は着く。魔法が使えたので転移で戻ろうとも考えたが、知らない土地でそれは面白くないので辞めた。


 数メートル歩くと見慣れた家が見えてきて、自分が倒れていた場所が分かった。

 そこは元々ただの広い空き地の前だ。何も無かった空き地に、数件の家が建っていたので知らない土地だと勘違いしたのだ。

 

 見慣れた家達も所々変わっており、代わり映えしない世界が驚く程新鮮に見える。


 「ここのケーキ屋さん潰れたんだ」


 我が家の近くにあるので時々食べるそこそこ美味しいケーキ屋さんは、店内に物が一切無くなっている。

 ここのケーキはまぁまぁだが、全商品平均ちょい上くらいの味で当たり外れがないので贔屓ひいきにさせてもらってたので残念だ。


 「着いた着いた。我が家は変わり無しと」


 多分この夢は何処かで見た、テレビ番組やフィクションをベースに作った未来がモチーフなのだろう。たまによく分からない、ハイテクそうな物が置いてあったりしたので間違い無さそうだ。

 一番不安だったのは我が家が無くなっていたり売却済みの場合だったが、見た目に変化無く表札も線崎のままだった。後は蒸発してない事を祈るだけだがありえないだろう。金ならあるし、悪事を働くような人達でもないから大丈夫。


 「さっさと入ろうな皆。・・・あれ?」


 ここ最近一人で行動する事が殆ど無かった為に、無意識に頭の上と胸ポケットに向かって話しかけている自分が居た。

 ずっと誰かと一緒にいる時間に満たされており、一人だと実感すると寂しい感じてしまう。

 だが我が家は目の前で、皆待ってるだろうから抱きついて寂しい気持ちを癒してもらおう。

 

 少しだけそわつきながらインターホンを押し、室内からの返事を待ったが特に反応は無かった。

 

 「誰も居ないのか?それともまだインターホンを習って無い設定?」


 夢の中では、こういった変に辻褄つじつまが合わないのはご愛敬だしそんな所だろう。

 鍵は持っていないので仕方なく魔法を使って回し、入ろうとしたらドアはピクリともしなかった。


 「空いてたんかい!」


 鍵が空きっぱなしなのは我が家で多々ある。それはお母さんの天然のせいだ。

 気を付けろと何度言っても週一、多い時で週二で閉め忘れる。

 まさか今空いてたとは。夢さんはさすがだ。

 結局二回も魔法で鍵を開ける事になってしまった。

 こんな事で文句は言わないが、しっかりとお母さんに教えなければ。


 「お母さん!居ないの?」


 家の玄関を開けて大きな声で呼んで見たが、誰からも返答は無い。

 このパターンはお母さんがミサトにリンとラウを連れてショッピングに行って着せ替え人形にし、お兄ちゃんはフェストとの散歩に行ったのだろう。

 昨日は可愛い子好きのお母さんが、皆が帰った後で自分の服をガールズに着せて、美意識高いラウ以外へ地獄を与えたのは記憶に新しい。ガールズお疲れ様です。


 誰も居ないのなら久しぶりのソロティーパーティーを決行出来ると、ルンルンで手を洗いうがいにハンドクリーム塗りリビングに向かう。

 短い廊下を歩きドアを開けて一歩を踏み出すと、気持ちの良く綺麗な尻から落ちる転び方をしてしまった。

 魔力で身体能力を強化している為、転びそうになっても持ち直せるので久しぶりの体験だった。

 

 「何かこぼしたな」


 転んだ勢いで、足から感じた滑る原因の液体が舞い顔に飛び着いてしまう。


 「もう!汚ったねぇな。何だよ」


 イラつきながら液体を指で拭い取り、確認すると元々肌色の指先が赤黒く染まっていた。

 ぐっちょりと液体を吸い、気持ちの悪い靴下も見てみると同じよう赤黒く染まっている。


 「どうゆう事、だよ」


 立ち上がり室内を見通すとそこには、僕の大好きな家族全員の血と肉が壁や部屋中に飛び散り、血色に染まった綺麗に眠る顔があった。


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