精神異常者
それだけ危険視していた死地に五歳の息子が勝手に行き、更に全国のダンジョンを攻略して帰ってきたとなっては頭が回らないのも何ら不思議は無い。
逆の立場なら息子がダンジョンを駆け回るなんて怖すぎる。そこへ攻略して当たり前に家へ帰ってきたとなると、精神異常者だと病院へ連れていくと思う。
もしダンジョンに入る時のワクワクした顔を見られたら、鬼の子や化け物と畏怖されるだろう。
帰ってきた時と反対に、何も発せないお母さんに変わってお父さんが話を詰めてくる。
「それはその日じゃないとダメだったのか?自分の偽物を作ってまで急いでやる事だとお父さんは思わないぞ。そういうのはゆっくり時間をかけてものだと思う」
お父さんの言う事は冒険者としては当たり前の事だ。生死をかける冒険者と言えど自分の命が一番大事だ。
だからじっくりとダンジョン内容を詰めに詰めて、もう何も新しい情報は無いと安心して向かう。
だが二週間と制限の付けられた僕にはそんな事している暇は無く、例えトラップがあっても踏み抜いて進む選択しか有り得なかった。
「お父さんが思ってるのも間違いじゃないよ。普通の冒険者だったら。でも僕には全部のダンジョンを攻略出来る自信があった。毎日数百人以上、下手したら千人以上の冒険者がダンジョンで死んでる。だから一刻も早く死ぬ人が減り安全に強くなる為に僕がやらないといけなかったんだ」
ぐっと手に力を入れておどおどせず、堂々と手段は間違ってしまったが、やった事は何も間違って無いと強く意志を込めて両親に伝えた。
するとお父さんは僕を否定せず、諭すよう声をかけて受け止めてくれた。
「そうか。ハルトがそう決めて行動したなら何も言わん。実際にやり遂げたんだろ」
「うん」
「じゃあ誇れ。ハルトがやった事は普通じゃなといと、ダンジョンに詳しくなくても分かる。冒険者の為に命をかけてやり遂げた最高にかっこ良いやつだ。お父さん達は称えはすれど非難はしない。・・・ただ」
僕の目の前に来て頭に手を置き、誇れと言いつつ自分が誇らしそうに肯定するお父さんの姿は、今まで一番かっこ良く見え最高の父親だった。
お父さんはまだ何かを言いたげで、これ以上に何を伝えてくれるのだろうと思い聞いてみた。
「ただ?」
「せめて一言くらいあれよな!電話も途中で出来ただろ」
「結局非難してるし!最後までかっこ良くしろよ!」
お決まりのような落ちを作り、楽しそうに笑うお父さんはかっこ良かったのに、いつも通りのくだらないおっさんに逆戻りしてしまった。
かっこ良いままでいてくれてと心底願ったがどうしてか、くだらないおっさんの方が落ち着く。
やっぱり僕達のお父さんはこうじゃないと。
「ワッハッハ!真面目なのは疲れたんだよ。それで言う事はあるか?」
お父さんは大笑いしながら椅子に戻り座った。
「いやまぁコピーを残して無言の方が、全国のダンジョンを回ってるって報告するより心配かけないかなって」
「まぁ分からなくはないがタイミングが悪かったな」
ちなみにダンジョンに勝手に入った事で怒らなかったのを盾に、後でリンを独占する契約を結ばされた。
ごめんリン。一回だけ耐えてくれ。
「話も終わったしケーキ食べよう!」
夏希はお預けをくらいケーキを食べたくてしかかたないようで、フォークを持ってうずうずしていた。
だが僕の話はまだ終わってないので、あと少しだけ我慢してもらおう。
「まだ話あるからもうちょっとだけ待って!」
「ブーブー」
「帰れ帰れ!」
堪忍袋の緒が切れた子供達からは、僕に向けたバッシングが始まってしまった。
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何故か同じ話が三回投稿されていました。
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