少しは心配してよ

 何故か家族ではない二人が家に居り、お母さんに怒られるという恥ずかしい所を見られていた。

 どのように声をかけるか正解が分からないが、お父さん達も含めて取り敢えずは言わなければならない言葉を発する。


 「皆心配かけてごめん」


 僕が頭を深く下げて謝罪をすると、部屋には誰もいないのかと思うほど静寂に包まれた。

 またお母さんの時と同じく、締め上げられるのかと思い震えそうになっているとクスッと笑い声が聞こえた。


 「誰もハルトの事心配してないわ」

 「え?どういう?」


 それはそれで寂しい事を夏希に言われてたが残念な事に全員首を縦に降っていた。

 さすがに誰か一人くらい心配してほしかったな。まぁお母さんみたいに心配させるのは申し訳ないから別に良いのだが。


 「ハルトこれは何だ」


 怒ってはいないが真面目な顔をしたお父さんの事実確認が始まり、見せられたのは僕と瓜二つのコピーだった。

 僕のコピーは微妙な顔をして軽く手を振り、ポンと軽い音を立て消えていく。


 「それは僕のコピーです」

 「知っている」

 

 知っているなら聞かなくともと思うが本人から聞く事が大事なのだろう。

 コピーの事だけ聞くとお父さんはそれ以外は何も追求してこなかった。


 「ちなみにどうしてコピーだと分かったの?」


 僕は何故コピーがバレてしまったのかだけ気になりお父さんへ恐る恐る聞いてみる。

 するとお父さんはこいつだとお兄ちゃんを指指し、本人はドヤ顔をして僕を見ていた。


 「コピーにずっと違和感あるなと見ていたら、ずっとトイレに向かう所を見ていない事に気付いたんだ。それでハルトじゃないって分かり、偽物が居るなら本物も生きてるよなって事でお母さん以外心配しなかった訳だ」

 「なるほどトイレか。詰めが甘かったな」


 自分のミスでバレてしまい心配されなかったのだと理解し、新たな魔法の改善案が生まれしっかりと心のノートに書き込んでいると、背後から頭部に強い打撃を受けた。


 「イタ!」


 後ろを振り向くとお母さんが威嚇するように、拳を握り顔近くまで上げ顔が半分鬼になっていた。


 「詰めが甘かったじゃない!次何も言わないでやったらゲンコツするからね」

 「お母さんゲンコツ今したよね!結構痛かったよ!」

 「ごめんなさいは?」

 「ごめんなさい」


 また怒られて小さくなっていると、大好きな美雪先生から声をかけられた。


 「ハルト君大丈夫?」

 「大丈夫です」


 美雪先生は目線を合わせて僕を強くではなく、優しく締め上げず抱いてくれた。

 美雪先生大好き。結婚しよう。

 

 「怪我もなさそうで良かった」

 「頭が少し痛いけどね」

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