皆と再開
ただいまへの返事は無かった。
その代わりに建てられて三年しか経っていない綺麗な家から、バタバタと大きく誰かが走る音がインターホン越しに聞こえる。
そして勢い良く扉が開き、目の前が何も見えなくなり暖かい何かに包まれた。
何も見えないはずなのに、誰に何されているか手に取るように分かる。
「ごめんねお母さん」
相当お母さんは心配したのか強く無言で僕を抱きしめ続けたっぷりの愛情を注がれた。
しばらく外で抱きしめられ、オセロさんやご近所さんの目があるので恥ずかしくなり、家の中に逃げる為お母さんを引き離そうとしたがなかなか解放してもらえず、抵抗しようとすると力がグッと強くなるのを感じた。
「お、おか、あさ、ん?」
時間が経過するにつれ段々と抱きしめる力が強くなっていき、抱きしめるというよりも絞め上げるに近くなりただ事ではないことを察知した。
「お母さん!痛い痛い!ごめんなさい!ごめんなさい!」
即座に謝罪をするとお母さんの強い力が抜けて自由の身になった。
一体どんな顔で絞め上げていたのか気になり恐る恐る見上げると、目の前にはお母さんの顔をした鬼がいた。
「あんたどれだけ心配したと思ってるの!」
「ヒィィィィお鬼が」
「誰が鬼よ!鬼にさせたのは誰だと思ってるの!」
僕は鬼から怒声を浴びて襟を掴まれ、親猫に連れていかれる子猫のような状態にされた。
「ハルトこの人は?」
玄関前で抱き合う親子を大人しく見守るオセロさんに気付いた鬼は、宙吊りの僕と目線が合うように持ち上げ説明を求めてきた。
「脱走した間の保護者役をしてくれたオセロさんです」
説明をすると僕を地面に一度下ろし、鬼顔がスっと消えて優しそうなお母さんに戻り、よそいきの顔でオセロさんに話しかける所を見て、脳に刻まれたのは恐怖だった。
この人は怒られせてはいけない、モンスターよりも怖い存在だと理解した。
「あらお見苦しい所を。オセロさんうちの子がすみません。お礼をしたいので上がってください」
一部始終見ていたオセロさんは、お母さんの提案に上手に笑う事が出来ず、頬をピクピクと痙攣させながら了承していた。
オセロさん本当にごめんな。
僕は自分で靴を脱ぎ、再度襟を掴まれて椅子に座らされ小一時間程鬼にしばかれた。
その
これは一生記憶に残り続けるだろう。
お母さんは強し。
お説教が終わり長い間視線を感じた方向を見ると、お父さんとお兄ちゃんから可哀想な目で見られており追加で怒られなそうでほっとした。
そして憐れむ二人の奥で、震えて抱き合う美雪先生と夏希の姿があった。
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