クソ金髪からクソ舎弟希望坊主

 「オセロさんの知り合い?」

 「いや私も知らんな」


 オセロさんの知り合いでもなく、もちろん僕の知り合いでもないので坊主頭の男性の勘違いという事で決定付けた。

 一応タクシーの運転手に視線を合わせたが、首をブンブンと横に振っていた。


 「すみません。誰かと勘違いされていると思うのですが」

 「いえ!間違っていません!」


 堂々と腕を後ろで組みたたずむ坊主頭の男性は僕の言葉を否定した。

 どうして間違っていないと断言出来るんだ?

 僕達に似たドッペルゲンガーでも居るのだろうか。

 話が進まないので、取り敢えず僕達の誰に似た人に用事があるのか聞いてみる事にする。


 「誰の知り合いなんですか?」

 「ハルト兄貴にオセロさんっす!」

 「名前は合ってるって事は人間違いではない」


 僕はこんな人に会った記憶は一切ない。

 こんな兄貴なんて呼んでくる、キャラの強い人に会っていたら嫌でも記憶に残るはずなのだが。本当にこいつは誰なんだ?


 「先程は生意気言い後片付けまでさせてしまいすみませんでした。あの強烈なパンチは俺の心に響きました。初めて圧倒的力を味わい感動しました。是非とも俺を舎弟にしてください。ハルト兄貴程の強いお方に仕えたいんです!よろしくお願いします!」

 「強烈なパンチ?あっ!さっきのクソ金髪か!見た目変わりすぎだろ!?」


 この坊主頭の男性の正体は、タバコで僕達に迷惑をかけたクソ金髪だった。

 一時間くらいで、クソ金髪から舎弟志望クソ坊主に少しランクアップしており、僕は少し感動してした。

 正直な所殴って脅しただけなのだが、一人の男性が恐らく良い方向に向かってくれた事を嬉しく思う。

 死にかけると価値観が変わるって奴か?

 ん?やっぱりあまり変わっていないか?

 どちらにせよ暴力でしかないが、中身は分からないが見た目だけはマシになってくれて、もしかしたら思っていた怯えて引きこもりになる未来じゃなくて良かったよ。


 「えっと苦楚屋くそや君だったかな?」

 「はい!」


 苦楚屋くそやは、名前を呼ばれると嬉しそうに目を輝かしており純粋な子供の目と全く同じものだった。

 元気いっぱいの苦楚屋くそやに対して僕が暴力で変えるのではなく、自分の力で生き方を変えれるように一つ提案をする。


 「舎弟になりたいんだよね」

 「はい!舎弟になりたいです!

 「じゃあ舎弟にしてあげる」

 「ありがとうございます!」


 苦楚屋くそやは舎弟公認にしてあげると、姿勢を正し腰を折って大きな声で感謝を告げた。

 本当に同じ男性なのだろうか。

 クソ金髪の時に比べて、見るからに舎弟の姿が板についている。元々舎弟になりたかったかのようだ。


 「ただし条件がある」

 「なんでしょう」

 「ここの北海道ダンジョンをクリアしてこい。チャレンジ回数の制限は無しで人数は何人でも良い」

 「ハルトの兄貴、それは無理ですよ。このダンジョン中級ですが、それでもクリアした人居ないんですよ。それにまだ世界で一つすらクリアされた所無いじゃないですか!」


 確かにこの世界でダンジョンをクリアした者は誰も居ないとされている。

 まだ僕が公式に発表をしていないからだ。

 もしかしたら他のダンジョンでクリアした人はいるのだが、名乗りを上げず隠しているのかもしれない。

 まぁそんな事するメリットはほぼ無いから可能性としては低いが。


 「さっきの僕がクリアしとしたからその動画見ろ。ダンジョン協会の関係者なんだろ。許可出しとくから研究してクリア出来たら舎弟を認める」

 「まじっすか!?さすがですハルトの兄貴!絶対クリアしてみせます!」

 「クリア楽しみにしとくよ」

 「あと他人に迷惑かけるなよ!これでもかなりの有名人なんだからな」

 「ハイっす!」


 という事で時間があればクリアは余裕だと思うので実質的に舎弟が一人出来ました。

 一度殺しかけて放置はよろしくないからね。

 罪滅ぼしみたいな感じで舎弟にしたのだけど喜んでいるなら良いよね、うん多分。

 それに強くして、いつかのくるモンスターパレードの為にも戦力はいくらあっても足りないしね。

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