海鮮丼と兄貴

 「やばいなぁ」

 「人間技じゃない」


 大きくモニターに映る僕が、ダンジョンでモンスターを容赦なく倒し無双する姿を見て、職員達は口をポカンと開けアホそうな顔になり口々に感想を述べていた。


 「さすがにハルト君には簡単だったね。まぁボスすら一瞬だとは思ってなかっけど」


 おじさんは元々余裕だと思っていたらしく、驚いてはいなかったが未到達階層もサクサクと進みボスを倒す所は多少動揺していた。


 「すごいでしょおじさん!この程度のダンジョンなんて僕にとっては余裕なんです!」


 僕は腕を腰に置き、おじさんに向かって鼻を膨らませてドヤ顔をしてみせた。


 「可愛い!ハルト君ってすごいんだね!」


 ドヤる姿を見てフリーズお姉さんは、僕のほっぺたをぷにぷにと触りおもちゃのように弄り倒され揉みくちゃにされた。

 おじさんに触られるのは遠慮したいけど、可愛いお姉さんなら好きなだけ触らせても良いかな。


 幸せそうな顔だなと思い、ほっぺたをお返しにつんつんさせてもらうともっちもちで指が弾き返される感覚があった。

 ハリがありツヤツヤでぷにぷに感がどこか美味しそうだ。これが北海道の力なのか?恐るべし北海道。

 彼氏さんはこのほっぺたを堪能しているのだろうか。羨ましい。

 僕も早く大きくなって可愛い彼女が欲しいな。


 「オシェロしゃん。この後どうしゅる?北海道まわりゅ?おにゃかひぇったから海しぇん丼食べりゃい」

 「海鮮丼か良いな。分かったこの後食べに行こう。最高の海鮮丼を食べに行こうじゃないか!」

 「海しぇん丼だー!おにゃかひぇったー!行こう!今しゅぐ行こう!おじしゃんケーキ何時くりゃいににゃるか分かりゅ?」

 「後三時間くらいだと思うよ。後で出来たら連絡しよう」

 「あでぃがとょう」


 お昼ご飯に海鮮丼を食べる事に決定し、僕のほっぺたを弄り続けるフリーズお姉さんの手を離させてオセロさんと出発準備を始めた。

 オセロさんは僕が居ない間パソコンで仕事していたらしく、パソコン類に消しカスや書類とお菓子の包装と、机の上はそこそこに汚れているので少し時間が掛かりそうでお手伝いだ。

 別に早く食べたいという卑しい理由では無いぞ!

 手分けして準備をし、湯のみを流し台に直し片付けを終了させ机の上には何も無い状態にする。


 「最後にアルコールで除菌して終了と!ついでにクリーン」


 机は黒ずんで老朽化しており、魔法を使って元の綺麗な状態に戻して来た時よりも輝かしく新品のようなピカピカ姿で返却をした。

 おじさんはどうやっても取れなかった黒ずみが無くなって大喜びしており、これで気持ち良くお茶を飲む事が出来ると言っていた。


 「オセロさん行こう!海鮮丼だよ海鮮丼!早く!早く!」

 「急かすな急かすな。海鮮丼は逃げないから」

 「そんなの知ってるよ!お腹減ったから早く食べたいの!」


 僕は動きの遅いオセロさんを背後から押して急がせ出口へと誘導する。

 どうせまた戻るので、軽く事務所中に挨拶だけし退出する。最初に比べて異物さが無くなり、皆は手を振って行ってらっしゃいと送り出してくれた。


 仮設事務所プレハブから外に出ると、忘れていた北海道の冷たい風が吹き荒れ直ぐにポケットに手を入れて縮こまり体をブルりと震わせる。


 「寒いね。早くタクシーに乗ろう」


 僕達は目の前にある、ダンジョン前の道路にに電話して呼んでおいた、暖かいだろうタクシーに乗り込んで温もろうと早足で向かった。


 するとこの気温では適していない寒そうな坊主頭で、ビシッとスーツを着こなした大学生くらいの見た目の男性が走って僕達に近寄り、深々と頭を下げて大きな声で挨拶をしてきた。


 「兄貴お疲れ様です!」


 その姿はヤクザの下っ端のようで、僕の中身が見た目通りの年齢ならば絶対に泣くだろう厳つさを全面に出している。

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