北海道のクリームは主張が激しい

 「いや無理があるだろ!何歳だよ!」


 このおじさんはオセロさんと同級生と言うのだ。

 それはなんでも無理がある。

 一人はダンディー俳優に、もう一人はただのおじさんだぞ。

 おじさんがかなり老けてるのか?

 オセロさん若すぎるのか?

 それとも両方か?


 「君がハルト君だね。おはよう」

 「おはようございます」

 「さっきも言った通り、雄朱路おすろとはね同級生でね。今年で五十歳なんだよ」

 「??????え?いやいやいや無理があるでしょ!これで五十とか無理があるでしょ」


 僕はオセロさんを指を指して、おじさんの言葉を全力で否定した。

 本当ならオセロさん若作りしすぎだろ。

 違和感無さすぎるし!

 驚く僕に対しオセロさんは慣れているのか戸惑った様子なく、ステータスカードを僕達に渡してきた。

 僕とお姉さんは顔を並べて、名前の横にある年齢欄を見ると水戸 雄朱路おすろ(五十)としっかり記入されていた。


 「マジやん!?」

 「おじさんと同じ歳!?」


 僕達は妖怪のような摩訶不思議で非現実的なものを見た顔をし二人で見合せ、オセロさんの顔を再度確認した。

 何度も見ているがその顔はダンディー俳優にしか見えず、ステータスカードが間違っているのか見直したり、擦ったりしても変わる事はなかった。


 「何度見てよ変わらんぞ。正真正銘の五十歳だからな」

 「「マジ!?」」

 「マジ」


 完全に脳がフリーズして、世の摂理に反する目の前の出来事を解釈してくれなかった。

 オセロさんは人間じゃないのかもしれない。

 あ!なるほど。エルフとか魔族の類か。

 人間じゃないならありえるな。


 「オセロさんお若いですね」

 「おい!何を悟った!」


 オセロさんは、完全理解した僕にツッコミを入れてくれたが五十歳とは思えないとても若々しい一発だった。

 行動力もあってツッコミも出来る。

 さすがのダンディーオセロさんだ。

 あなたって人間じゃなかったんだね。(純粋に若く見えるだけの人間です)


 この世界には存在せず、前世を知ってる者でなければ理解出来ない事なので、意識の戻って来ないだろうお姉さんにそういうものだと暗示をかけさせた。

 するとすぐ現実に戻ってきたので、オセロさんをオセロさんという生き物だとちゃんと理解したようだ。


 「失礼しました。お若く見えたので勘違いしました」

 「いえいえ。いつも通りなので気にしないでください」


 お姉さんの対応にオセロさんは全く気にしておらず、恒例行事だろう対応をしてやっと若作りの話が終わった。

 僕もあんな風に歳を取れるのだろうか?

 イケおじになりたいな。


 立ち話もなんですからと、僕達は最初におじさんが顔を出した場所にある机に案内され、お茶とお菓子を出してもらった。

 お菓子はバーターサンドに白の黒い雷と、最後にクリームたっぷりのショートケーキだった。


 ケーキは東京で食べれるものと全く違いクリームが濃厚で、ケーキを作る為にクリームを使っているのではなく、クリームを楽しむ為にケーキという手段を取っているにすぎない。

 ケーキはただの形であり、あくまでもクリームがメインだと言わしめるものだった。

 実際にショートケーキなのに、上にはいちごが乗っておらずかなり挑戦的なスタイルをとっている。

 僕はこの挑戦的なショートケーキに敗北し、無我夢中で口に入れ一分程度で完食してしまった。


 「凄い食べっぷりだな。そんなに美味しかったか?まだあるけど食べるか?」


 おじさんは大きく頬張る僕を嬉しそうにニンマリと見ており、その様子は孫を見るおじいちゃんのようで暖かさを感じた。


 「ください!このケーキめっちゃ美味いです!どこのケーキですか?」


 僕がお願いすると、フリーズお姉さんもニコニコして鼻歌を歌いながら同じショートケーキをもう一つ準備してくれた。

 

 「ありがとうございます」

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