弟子のスピード出世

 「私それやる!先生と守った人達の為に頑張る!」


 彼女はこれから何をしようか、考えほうけている時とは違いやる気に満ちており、良い顔になっていた。


 「程々に頑張りなさい」

 「はーい!」


 しばらく羽の中で眠った後、頑張るぞと意気込んで彼女は街に帰っていった。

 それからは月に二回羽に埋もれに来て、勇者先生ハルトと同じように話をして帰る日々を送っていた。

 

 数ヶ月後、彼女が珍しく週末では無く平日の昼間に大量の花束を持って来た日があった。


 「どうしたの?今日は来る日じゃないでしょ。それに沢山花を持って」


 満面の笑みを浮かべて何も話さず、花を置いて羽の中に潜り混み彼女は頬ずりした。


 「あのね。私はリンに言われてからギルド(ダンジョン協会と同じような場所)で講師として働いてたじゃない」

 「そうね。毎回あの男の子は言う事を聞いてくれないだとか、センスのある女の子が居るだとか色々聞かされたわね」

 「それでね、私が頑張ってたからってあの街のギルド長になる事をが決まったの」


 ただの講師でしかなく若い彼女が、全役職を飛ばしていきなりギルド内で一番偉くなってしまうなんて異例中の異例だ。

 そんな事をしてしまえば、どこからか恨みを買うのは必然だ。恨んだ人間から襲われる危険だってある。

 まぁそんな輩を無効化出来る力を持つのも、選考の中にはあっただろうから適任の言えば適任だ。


 「凄いじゃないの!でも反対する人も居たんじゃないの?今のギルド長とか」

 「それが誰も反対しなかったの。この話は今のギルド長からの提案で、そろそろ疲れたからゆっくりさせてくれって。絶対に定年退職してやるって意気込んでたから、半分は押し付けた感じね」


 確かにここまで高スペックな人間は居ないだろうから、スピード出世の理由がよく分かる。


 「なるほど。まぁ良かったんじゃないの?でもギルド長になったら、他の街のギルドに行って教える事が出来なくなるわね」

 「そこは大丈夫。前ギルド長が最後の仕事にって、高い実力を持って前線を退いた人を集めた、蓄積された技術を託す教員課って新しい部署を作ったの。だから私は用済みって訳。まぁたまに前任者として視察に行ったり、一緒に教えたりするけどね」


 なんだか話を聞くと、退職の為にてい良く使われている気がするが、本人が良いなら言う事は無い。

 あるとしたら頑張りすぎるなくらいだ。


 「あなたエルフだからに最後は街のギルド長からギルド全体の長になってるかもね」

 「どうだろうね。でも寿命は千年以上あるし有り得るかもね。まぁ魔王を何とか出来ればだけど」

 「確かに。それならあと数年で終わるかもしれないわね」


 私は縁起でもない冗談を言って笑った。

 彼女は怒ったふりをしたが、なんだかんだ一緒に笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る