先生を心から愛した弟子

 女の子を拾い二、三ヶ月後が経った頃だろうか、名無ハルトしが勇者先生ハルトと呼ばれていきしばらくすると、雰囲気が優しくなり完全に変わっていた。


 女の子を育て始めはまだ、預かった親戚の子供が可愛い的な親バカで一人で育てていた。

 だが段々と本当の親の気持ちが目覚め、このまま旅に連れて行っても良いのか、どこかの幸せそうな施設に預けた方が将来の為になるのではないかと悩むようになった。


 一人では抱えられなくなり、他人と渋々話していが勇者先生ハルトが独学の育て方を辞め、年頃の女の子を育てる為にはどうしたら良いのか、こっそりと親としての先輩達に聞き始めた。


 その為勇者先生ハルトを見た親や親冒険者達が話しかけに来て、一緒にいる冒険者達も話しに混じる事が多くなり、他人と話す事に抵抗を覚えなくなっていった。


 最後にはお酒を交わし、べろんべろんになるまで飲み女の子の自慢大会を開催し、とうとう優しい親バカ姿が周知された。

 勇者先生ハルトは死ぬまで変わる事の無い完成形になり、女の子は皆の娘のようになっていった。


 先輩方の知恵もあり教育方針が完全に決まり、やりたいようにさせる事になった。

 皆の娘になった事でお願いされたら、育てても良いと言う人も多くなる。

 けれど女の子は絶対に勇者先生ハルトから離れず旅を続け娘兼弟子となった。

 

 「その時にはもう殺すなんて考えなくなって、私の為に頑張る先生が大好きになった。リンにはバレていたと思うけど、男性として愛していたの。いつ間にか魔王への現状報告も適当に嘘で誤魔化して、十年が経ち私は先生と同じ大人になった。何度も意識させる為に見た目にも気を使い始めた。その頃からリンは私への態度が悪くなったよね」


 彼女は話しているうちに、冗談を言える程にまで精神が回復していた。

 だから私はいつも通りの対応に変えた。


 「余計な事は言わなくて良いのよ。早く続きを話しなさい」

 「分かってるよ。今から一ヶ月前悪の根源の魔王を討伐する事が決まったの。だから先生との修行は厳しくなって、二人で最高のコンディションにもっていっていた。その時私は先生の助けを込で、世界でトップの魔法使いになっていたの。そして対決一週間前、魔王への最後の報告の日先生を殺す為の結界を貼れって言われたの」

 「それで結界を貼ったの?」


 私は彼女にそう聞くと、勢いよく首を横に振りまな泣きながら否定した。


 「ちゃんと抵抗したの!でも勝てなかった。手加減されていたのに全く歯が立たなかった。そして言われたの。お前らじゃ絶対に勝てないって」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る