火柱と大きな魔石

 貫通力の高い魔法に魔力を多く込めて攻撃してみたが、熱い守備を突破してダメージを与えることは出来なかった。

 貫通力は無いが、魔石で回復し全魔力で最大火力のドラゴンブレスを使ってもやはり効

ている様子は無い。


 「ハルトはどこを見てギリギリ勝てると思ったんだ?」


 やはりハルトもこの方法を考えてギリギリと言ったのだかろうか?

 この方法は出来ればやりたくないしおすすめも出来ない。

 ただ今回だけは実験でやらせて貰おう。

 その後は情けないが大人しく夏希ちゃんにおまかせする。


 「よし!我慢だぞ俺!」

 

 俺は作戦に必要な魔力を残し、全て火の魔力を剣にまとわせた。

 そして同じように魔力を全身におおわせ、ゴブリンロードへ走り込みある魔法を使った。


 「身体強化!」


 俺は強く地面を蹴り、ゴブリンロードの振りかぶった斧のタイミングを外して接近し剣で体を突き刺した。

 そして、マジックバックに入っている魔石を破壊し魔力を回復させ、火の魔力をありったけ剣を通して流し込んだ。

 するとゴブリンロードはぶくぶくと体が大きくなっていき、限界を超えると爆発し空へ火柱をあげた。

 そしてその場に残ったのは大きな魔石だけだった。


 「痛い痛い痛い痛いgyaaaaaaaaaa!!」


 俺は全力で地面に倒れ込み、体を回転させてのたうち回った。


 「リン!治して治して!」

 「自分で治しなさいよ」

 「そうか!」


 即座にマジックバックから魔石を取り出して魔力を回復させた。

 そして骨折して全身ボロボロの体に回復魔法を使う。


 「痛かった!こんなのもう絶対やりたくない!」

 「お疲れ様」


 リンは羽で俺の体を軽くぽんと叩いてくれた。

 この子絶対に家で飼おう。


 「疲れたよ。後は任せた」

 「何でよ!座って魔法使ってなさい!」


 そこから俺は大人しく、魔法でゴブリン達の魔石を回収しながら倒し続けた。


 今回ハルトの兄の英雄が全身を骨折したのは、ハルトがゴブリンと戦った時に骨折した体が成長していないという理由とは違う。


 身体強化は体を強化しているのでは無く、最大で出せる力を魔力で強制的に倍加させている。

 英雄は純粋に高すぎる火力に体が耐えられなかったのだ。

 ハルト場合は、前世から持ち込んだ体その物を強化する方法があった為に、ある程度は耐えることが出来たのだ。


 一応魔力である程度抑え、骨折を耐えれるのだがハルトは体が弱く火力が高すぎる為、わざと抑えなかったのだ。

 魔力で抑えてもすぐ折れてしまい、無意味となるのでタイミングを見て使っていた。

 英雄は魔力が足りないので抑える魔力を捨てて火力に極振りしたのだ。

 

 二人とも理由は違うが同じ事をやっていた。

 そしてこの痛みを知っているので、ハルトは英雄にゴブリンロードとの戦闘をさせなかったのだ。




 「お兄ちゃん結局戦ったのか」


 僕はお兄ちゃんが作り上げた火柱と転がる大きな魔石を見て、ゴブリンロードと戦ったのだと初めて知った。


 「よそ見して余裕だな!」


 ゴブリンキングは、よそ見した僕の顔を容赦なく殴り飛ばした。

 僕は空高く舞い、空中を流れ星のように落ちていった。

 高度がどんどん下がっていき、そろそろ地面にたどり着きそうになり受身を取ろうとしたのだが降下感がいきなり無くなり反対に浮遊感が襲ってくる。

 誰かが僕をお姫様抱っこして止めてくれたのだ。


 「何遊んでるのよ」

 「おー夏希か。ゴブリン達はどうです?」

 「ほとんど倒したわよ。ハルトのお兄さんも頑張ってたしね」


 僕は夏希にお姫様抱っこされてしまっていた。

 夏希ちゃんイケメン!


 「じゃあそろそろ遊ぶの辞めますか」

 「早く終わらせてよね」

 「ハイハイ。じゃあ足貸してくれる?」

 

 僕は夏希の腕の中から離れて足裏を合わせてもらった。

 

 「踏ん張ってね」


 そこそこの力で夏希の足裏を蹴りゴブリンロードへ向かって加速した。

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