英雄に足りないもの

 リンにはスキルの事を教えて聖属性を俺に使ってもらい魔法を習得した。

 そしてついでに喰らった強力な魔法のドラゴンブレスも習得できてしまった。

 更に分かった事もあり、中級程度の魔法ならば同じ種類の魔法の属性を変えるだけで使えることもわかった。

 一度ホーリーアローを受けるとアロー系統全て使えるという事だ。


 今回でかなり戦闘の幅が広がった。

 特に火力の高いドラゴンブレスが一番大きい。

 一発でそこそこな魔力を消費するが、それ以上に火力が高く使い勝手が良かった。

 ホブゴブリンなら一発で、アストラルファイヤーで燃え尽きるゴブリンのようになっていた。


 「あんたとんでもないわね。皆頑張って魔法を覚えるのに一瞬で覚えるなんて卑怯じゃない?」

 「そう?ハルトみたいに無双してないし、夏希ちゃんみたいに前衛がめちゃくちゃ強いわけじゃないから普通じゃない?」

 「何言ってるの」


 リンは俺を呆れた顔で見てため息を吐いた。


 「あなたみたいな人が、パーティーに一人居ると、とてもありがたいわよ。危ない方へヘルプをお願いしたり、単体でも前衛後衛両方出来てパーティーとして完成している。これ以上安心して任せられる人居ないわ」

 「そうなのか?」

 「そりゃそうよ。それにあなたは誰にでもなれるし、全てを組み合わせた自分にもなれる。力が足りないだけで、夏希の動き自体はできるんじゃないの?」


 俺はリンには言われ、自分の可能性を大きく感じれた。

 実際に夏希ちゃんの動きは力が足りないだろうが出来ると思う。

 夏希ちゃんの動きに、魔法を組み合わせるとどうなるのかワクワクが止まらなくなった。

 成長する本人達には勝てない。

 なら成長した分またコピーしていけばいい。

 全ての分野で一番になれなくても全て二番に居続けてやろう。

 そして全てを組みあわせて一番になってやる。


 「足りない力を補う方法があるんだけど聞きたい?」


 リンは企んだ顔をして悪事を働くように僕をそそのかしてきた。


 「もちろん聞かせてくれ」

 「身体強化なんだけど・・・」

 「なるほど。体が強くなるまでの、応急処置みたいな感じか」

 「まぁね。その後は使われないけどどう?」

 「やろう。教えてくれ」


 俺はリンの企みを聞き入れ、やり方を教えてもらいホブゴブリン達を実験台にして、体に慣らせて万全の状態へ持っていった。


 「これ結構良いかもな」

 「あなた本当にずるわね。いつか怒られるわよ」

 「お褒めに頂き光栄です」

 「褒めてないわよ」


 雑談しながらゴブリン達を魔石に変えゴブリンロードと対面をした。


 「さて俺もゴブリンロードを倒すか」


 俺はマジックバックに手を入れ、社長から貰った剣を取りだした。

 ゴブリンロードは、剣を構える僕へ斧を振りかぶり真っ直ぐ向かってくる。

 剣に火の魔力を大量に込めて斧へ合わせて弾き返した。


 「結構無駄に魔力使うな。足りない力を補うのは厳しそうだ」


 俺は真っ向から合わせて受けるのでは無く、斧を避けて体へ攻撃する作戦に切り替えた。

 何度か避け体に剣を入れる事はできたのだが、切り傷を着けるまでしかいかず、奥までは刺し込むこめ無かった。

 一度距離を取る為に、数十個程のファイヤーボールを打ち込んだ。


 「硬いな!」


 やっぱり俺は、今のままではゴブリンロードを倒すのはきつそうだ。

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