早く殺し合おう!
僕へ言葉をなげかけたゴブリンは、一階層の階段の入口からのっそりと姿を現した。
その姿はゴブリンロードよりも大きく、五メートル程の大きさで筋骨隆々ではなくスマートで引き締まっており無駄なものが無かった。
それだけで上位種を超えた力があると思わせてくる。
そしてその体には魔王の魔力を感じていた。
鑑定で調べてみるとゴブリンの最上位種ゴブリンキングだった。
お兄ちゃんや夏希では数秒でやられてしまうだろう。
ゴブリンキングは、他のゴブリン達が飛び降りていたように階段の最上段から飛び降りた。
すると落ちた部分の地面が割れて、足跡状にへこみ僕達の元まで風がやってくる。
「お前に聞いているんだ。男のガキ」
「どう、ゆうことだ」
なぜこのゴブリンキングが前世の俺を知っている。
今世でその事実を知っているのはリンしかいない。
一応リンへ目線を送ると首を横に振っていた。
「その反応心当たりがあるようだな」
「僕には全く分からない」
「嘘をつくな。なにか知っているのだろう。でなければ俺の言葉に反応しない」
ゴブリンキングは
「お前からは強い強者のオーラを感じる。それなら勇者について何か知ってるだろうと鎌をかけたが上手くいったようだ。何を知っている。知っている事を全て吐け。火水風土聖闇の勇者か。それとも一番の殺害対象の名も無き最強の勇者か?」
ゴブリンキングは
「それを知ってどうする」
「こいつらは全員殺害対象なんだよ。情報や死体を渡すと、魔王様から力を与えてもらえ強くなれるんだ。だがらお前には情報を渡してもらおう」
なるほどな。
他の勇者は知らないが魔王は余程俺を殺したいらしい。
「それでお前らみたいな雑魚に調べさせてるのか」
「誰が雑魚だって?ゴミが」
ゴブリンキングは鋭い目付きに一瞬なったが直ぐに冷静になり落ち着き取り戻した。
「危うく殺すところだったぞ。情報を出すまでは活かしておかねばならんからな。弱い犬ほどよく吠える。好きに言えば良い。情報を吐かせてから殺してしまえばなんら問題ないからな」
ゴブリンキングは段々と近付き、それに合わせて僕も歩いていく。
「情報だけで良いのか?」
「どうゆう意味だ」
僕はあと二歩でぶつかる所まで迫り、高低差のあるゴブリンキングの目を真っ直ぐ見て笑ってやった。
「その殺害対象を目の前にみすみす逃すのかって事だ」
「お前ごときが勇者だと。片腹痛いわ」
ゴブリンキングは大笑いをしてお腹を摩り急に真顔になった。
「俺の半分の実力も無さそうな子供が勇者な訳無いだろう。おままごとでもしてるのか?」
「これでも言えるのか?」
僕の体から輝かしい聖なる魔力と、うねる炎の魔力が流れ出初め全身が全能感包まれていく。
「ファミリア」
スキル発動することによって流れ出る魔力も爆発的に増えていく。
そしてその魔力は収束していき体内へ閉じ込め僕の周りだけに漂い始めた。
「まだ死ぬなよ」
僕はファミリアで強化された、ほとんど全てのものを粉砕出来るほどの強力な拳をゴブリンキングの胸に打ち込んだ。
するゴブリンキングはダンジョンの広場の中央まで来ていたのだが凄い勢いで飛んでいった。
止まらない体は派手に砂煙を上げ壁へ衝突しやっと止まり地面に倒れ込む。
ゴブリンキングはかなりのダメージが入りゆっくりと膝に手を付き、口から血を吐きながら立ち上がった。
「よく耐えたな。流石魔王に強化されたゴブリンキングだ」
ゴブリンキングはほとんど虫の息状態だったのだが、全身に血管が浮かぶ程の力を入れると殴った場所にあった傷は綺麗に無くなり完治する。
そしてゴブリンキングは大喜びした。
「この世界でこれだけ強ければ勇者で間違いないだろう。もし違っても連れていけば喜ばれるはずだ。早く早く殺し合おう!」
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