火力最強ヒーラー

 「えっ!?そうなの?」

 「そうだよ。ゴブリンロード倒したじゃん」


 夏希はソロでゴブリンロードを討伐している。

 ゴブリンロード程の上位種を倒せるのは、世界全体で力を誰も隠していなければここにいる三人だけなはずだ。

 冒険者として大きく進んでいる前世を含めても四桁も行かないだろ。

 多いと思うかもしれないが冒険者は十億程居て四桁。一万人に届かないのだ。

 どれだげゴブリンロードが強く、夏希がイレギュラーなのかが分かるだろう。


 夏希の場合は例外だが、記録されている最高ランクがレベル三程度ならば一秒持たず瞬殺されてしまう。

 早くこの世界の冒険者が成長してくれないと、今回のゴブリンのような出来事があれば直ぐ人類は滅んでしまいそうだ。


 「実はですね、あいつの魔石は数千万円するんですよ」

 「え!?そんなにするの!?取りに行かないと!」


 今にも走り出しそうな夏希を捕まえ椅子を収納魔法から取り出し座らせた。


 「まぁまぁ聞きなさいって。言ったでしょ!一番稼いだって言ったのは夏希だって」

 「でも取りに行かないとゼロ円だよ!」

 「取ってなかったらね」


 僕はニヤッと良い笑顔を見せて収納魔法から大きな光る物をチラリと少しだけ見せた。


 「まさかハルト・・・」

 「そのまさかです!」

 「ハルト大好き!」


 ドーンと魔石の全貌を見せると、バスケットボールサイズのとても大きな魔石だった。

 僕が倒したホブゴブリンでも、バレーボールサイズだったのに対し更に二回り以上大きな魔石だ。

 ホブゴブリンは、意外と頑張れば倒せるけれどゴブリンロード程の上位種を倒せる者が少なく出回らないのでどうしても高額になるのだ。


 しれっと夏希大好きって言われて抱きつかれてね!?

 こんな夏希ちゃん見た事ない。

 普通に可愛いのだが。


 「その魔石大きすぎね!?」

 「そりゃお兄ちゃんでもギリギリなくらいの強さだからね」

 「夏希ちゃんって結構ヤバい子?」

 「しかもヒーラーだからね」

 

 夏希は実際とんでもない子で、前世でもそこそこ訓練やモンスター討伐したら上位に食い込むほど強い。

 そんな子のスキルが!回復や聖魔法に特化した聖女ならばもう手を足も出ない。

 一生懸命頑張り、傷付けた化け物が勝手に回復するのだ。

 勝てるビジョンが湧かない。

 とりあえず最強だ。


 「私って凄いの?」

 「まぁ今の所は世界で二位じゃないかな。」

 「一位は?」

 「もちろん僕」

 「俺は?」

 「三位」

 「負けた」


 お兄ちゃんはまたへこんでいた。

 今日は感情の起伏が激しいな。一応フォローしてあげよう。


 「お兄ちゃんは魔法剣士だからね。今は万能が売りなんだよ。まぁいずれ魔法を使った前衛の方法とか教えてあげるから良い勝負出来ると思うよ」

 「良い勝負なんだ」

 「うん。夏希は今でゴブリンロードを瞬殺できる火力を持ち、なおかつヒーラーだから自分で回復されるとキツくない?まぁ仕方ないと思うよ。相性と分野の違いがあるから。夏希は広範囲の魔法まだ使えないしね」


 お兄ちゃんは、相性の善し悪しで厳しいだけで戦力で見たら同じと説明したら元気を出してくれた。

 実際に遠距離攻撃出来るとかなり嬉しいしからね。


 「ねぇハルトヒーラーって何?」


 夏希はヒーラーすら知らないようで、一から教えてあげた。

 僕に抱きついたまま。そろそろ離れようね。 

 おじさん勘違いしそうだよ。


 「ヒーラーってとは回復魔法専門の人を表すパーティでの役職の事だよ」

 「なんでヒーラーなの?」

 「夏希の持ってる聖女のスキルは回復魔法の多い聖属性のスキルだからだよ」

 「私聖女のスキル持ってないよ?」

 「え?」


 確かに夏希のスキルを見た時、聖女のスキルがあったのだがどういう事だろうか?

 夏希は自分のスキルを確認してみると、難問を相手にするような顔でスキルを睨んでいた。


 「なんか聖女と剣聖の加護が増えてる」

 「これはどういうことだ?」

 

 スキルが増える事はほとんど無いはずなのだが?

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