私と目覚めないお母さん2
そいつの名前はハルト。
その日は珍しい美雪先生が遅刻して来て、イライラしていた。
入園したハルトは、自己紹介で友達を作りに来たと、努力している人達の邪魔をするような発言をして許せなかった。
特進クラスは、自分を高めるクラスなのに。
私は追い出そうとしたが、よく分からないけれど大人の事情で美雪先生から却下されてしまった。
意外な事にもハルトは直ぐに謝り、傍から見たら私が子供な行動をして悪い奴に見てた。
それが嫌だった。
だから私は手を出すハルトに思いっきりビンタした。
私は悪くない。
後から知ったのだがらハルトは、先生達に特別扱いされ教室の中では勉強しなくて良いと言われてたらしい。
更に職員室にこもり、いつもお菓子を食べ会議室に専用の布団まであると知った。
私はハルトを親の金特進クラスに入ろうとしたクソ野郎だと決めつけた。
その日から、美雪先生の解答用紙がたまにを除いて全て当日に返却されるようになった。
更にいつもより分かりやすい、模範解答まで付いて来るのだ。たまに私の苦手な問題を
ある日私はハルトと喧嘩をした。
しかも私が一方的に悪い内容だ。
同学年と馴染めず、私が特進クラスの教室から追い出したせいでどこにも居場所が無かったのだ。
それなのに、唯一の居場所の職員室から教室に戻れと怒鳴ってしまった。
言い返されると思っていなかったので、喧嘩になってしまった。
ただ職員室でケーキ食べてるのはおかしい。
私は美雪先生に、職員室へ分からない問題を教えて貰いに来ていた。
美雪先生は他に、やりかけの仕事があり少し待っていると、ハルトは何故か私の解答用紙を見ていないのに、分からなかった所をピンポイントで当ててきた。
この時は本当に気持ち悪いと思った。
全てを見透かしているような目が誰も知らないはずの私の全て、正の面と負の面を知っているかと思ったのだ。
ストーカーかと本当に勘違いした。
でもそれは違い、ただたんにハルトずっと答え合わせをしていたからだったのだ。
それも特進クラスの全員の答案を、分かりやすい模範解答付きで。
人間業じゃない。幼稚園生がするような事ではないと思った。
明らかに脳のスペックが一般人と違う。
これなら先生達も特別扱いするのも分かる。
ハルトはお金持ちで、特別扱いさせている訳じゃなかった。
特別扱いされる程の学力を持っていたのだ。
すると今まで私のやってきたことは、かなり酷かっただろう。
身に覚えのない罪を着せされ、叩かれて私は最悪の人間だ。
また間違ってしまった。
私は許されないかもしれないが謝った。
許されなくてもいい。
間違った私が悪いのだから、罪は全て受けないといけない。
もう百点じゃないのかもしれないが、せめてこれ以上悪くならない為に。
下げた頭を上げると、口の中にケーキを入れられた。
そして許す代わりに、一人の私へ友達になって欲しいと言われた。
自ら友達を切り捨てた私に、もう一度チャンスをくれた。
全てを詰め込んだ私の心は優しく、手を差し伸べて欲しかっただけなのだろう。
嬉しかった。
私は直ぐに頷いた。
疲れちゃったよ。
友達と遊んでも良いのかな?
笑ってお話して良いのかな?
勉強ばかりで、自分を律することの出来ない私は逃げたのだ。
お母さん許してくれる?
分からないけど許してくれる気がした。
もう勉強は疲れたから、違う方法で笑わしてあげよう。
いつか、友達を連れてお母さんに会いに行ったら笑ってくれるかな。
その日一生ものの縁を結んだ。
友達が誰もいなくなってから、初めての友達ができた。
ただこの気持ちは、友達への感情なのだろうかは分からない。
何も分からないけれどあの時、手を差し出し張り詰めた心を解してくれたハルトと一緒に居たいと思った。
その時から私は、他人に注意する事をしなくなり程々に勉強をするようになった。
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