癖の強い女神様と無能な最強
「ソンナコトナイデスヨ」
「いやカタコトやん!」
女神様はくすくす笑って楽しそうで、またからかわれているようだ。
「恐らく最高の結果でしたよ。いえ二番目ですかね」
「一番目は?」
「知りたい?」
女神様は聞いちゃいます?恥ずかしい等ふざけた事をぬかし、僕の胸の辺りをつんつんして遊んでくる。
「早くしろ」
「きゃ!怖いなー。いじめちゃ嫌ですよ」
「はよ!」
「ハイハイ。仕方ないなー。最高の結果は、あなたが倒す事でした。引き伸ばすだけなら封印も手でした。けれど引き伸ばすだけですからね」
女神様は自分で言ったばかりの事と正反対の説明をした。
少し前に倒す事は出来ないと言っていたのに、今は最高の結果は倒す事だと言っている。
意味が分からない。
「僕では倒せないんじゃないのか?」
「ええ。あのままでしたらね。」
「あのまま?」
「ええ。あなたが人間を辞めれば良かったのです。例えば悪魔と契約して、人間と寿命を捨てる代わりにあいつ殺す事だけに特化した化け物になるとか。お得意でしょう、契約は」
なるほど。確かにどうせ自爆するなら人間を捨てても特に変わらなかっただろう。
もう少し考えれれば、あいつを倒せていたかもしれなかったのか。
「あとは人間をやめて進化するだとか。超特化武器になるだとかですね。よく聞くでしょう。対魔族武器だとか対レイス武器だとか。あれになるんですよ。意外と人にこだわらなければ色々あるんですよ」
「あの最高の選択が沢山あるんだけど」
僕もしかして意外と馬鹿なのか?
「人間を捨てるのが条件の物は一つにまとめて、二番目に良かった選択ですね。そんな事考える人類はほとんど居ないですから期待してませんでしたよ。まぁ悪魔との契約は出てくれても良さそうだったのですが」
「すみません」
僕は前世からの無能さに失望し大きくため息を吐いた。
「・・・ルト起きて!ハルト起きて!」
「夏希!?夏希の声がする。女神様夏希の声が!」
なんで夏希声がするんだ。夏希も死んだのか。ゴブリンロードに殺されてしまったのか。僕が油断したから。
僕が死んだ時皆死ぬんだと思った。
でも実感が湧かなかった。どうしても他人事のようだった。
だが実際に皆の死を実感すると、たまらなく辛い。
何も考えられない。
考えては本当に抜け殻になってしまう。
僕はどうせ死んだんだ。
この後どうなるかは分からないが、魂は洗われ記憶を消して産まれ変わる等何かしらされるのだろう。
だったら早く連れて行ってくれ。
「・・・ト君!ハルト君!ハルト!起きなさい!あなたとまだ何も話せていないの!あなたにあの時のお礼も言ってないのに。死ぬなんて、許さな、いんだから」
「ハルト起きてよ。お願いだから目を覚ましてよ。起きないとまた叩くんだから!」
近くから僕を呼ぶ声がする。
ぼやけて聞こえていたのが、だんだんクリアに聞こえ二人の感情が伝わってくる。
僕の目は濡れていないのだが、頬が濡れ水滴が横に流れていく。そして少しずつ量が増えていった。
「女神様僕もう無理なんかな。今世に後悔しか残してない。このままの成仏なんて出来ないよ。何とかあいつらを助けさせてくれないか。そしたらなんだってする。だからお願いだよ」
女神様の肩を掴み、無理だと分かっているが僕の終わってしまった二度目の人生をかけたお願いをした。
「ごめんなさい。私は死んだ人を生き返らせる事は出来ないの」
「そうだよな」
僕は、女神様から腕を離して地面に崩れ落ち、
あの時早く気付いていたら。走り出す夏希を止めていたら。
「そろそろのようですね」
僕の涙で何も見えない世界が、淡く輝き始めてきた。
涙を腕で拭い、視界を強制的に開くと僕の体が粒子に分解されていた。
「あんた本当にばかだよね!」
女神様は僕の体を凄い勢いでバシバシ叩いて大笑いし、転生する時に馬鹿にされた事思い出した。
「まだあんた死んでないわよ。いや一回死んだけど体は生き返ってるのよ。今は魂の復活待ちの時間」
「は?」
完全に僕の脳がフリーズしている。だが一つだけ言う事がはっきりしているを
というよりこれしか言うことが無いだろう。
「はよ言えよ!」
「相変わらず良い顔ですね!」
「本当に次会ったらぶん殴るからな!」
「楽しみにしてますね」
僕の決意を女神様は笑顔で透かし、手を振ってお見送りをした。
視界が白く霞んで何も見えなくなり、意識が霧散していく。
「あっ!?スキルの事教えるの忘れてた」
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