ゴブリンロードと別れ
今回は心配しているであろう先生達や子供達の為に、早く帰りたいので収納魔法にゴブリンを詰め込んで戻ることにした。
収納魔法に生き物が入る事は無いのだが、死んでいると物扱いになり入れる事が出来る。
発酵している土等、微生物は物として入れる事が出来るのでイメージ次第なのだろう。
もしかすると、人間も僕が物だと思えば入れられるのかもしれない。そうなる事は無いだろうが。
僕は最初土属性の魔法で作った壁を消し、皆の元に集合し直した。
「結構早かったな」
「まぁな。思ってたより、ちょっとかかっちゃたけど」
「
「だよな。まぁ中層にしか居ないからって事もあるから過剰な気がするけどな。ん?なんで二層にゴブリンがいるんだ?」
ダンジョンの作りからして、上層のモンスターが下層に降りてくる事はほとんど無い。
前世から見ても一度だけ、ダンジョンそのものが壊れるダンジョンブレイクの時にあったが、このダンジョンに壊れそうな様子は見られない。
何があったのだろうか?
前日も強力なゴブリン達がパーティーを組んで中層にいた。
更にゴブリン以外のモンスターが消滅している。
この二階層から帰る途中、時々探索魔法で周りを探っているのだが、反応のあるモンスターは全てゴブリンで、他のモンスターは一体もいなかった。
何かゴブリンに関する、ダンジョンの改変が起きているのだろうか?
一階層はこのダンジョン特有の、攻撃をしないモンスターがちゃんと居て、何か変わっている所もなかったので早く戻りたいところだ。
一層にしばらく向かい、後十数分で戻れる距離になった時、前方から夏希が汗をかき息を切らして走ってきていた。
「ハルト!」
「夏希!?」
夏希はブレーキをかけること無く、真っ直ぐ僕へ走り急停止せずそのまま飛び込み抱きついてきた。
「ハルトの馬鹿!心配したんだから!」
まさかのリアムに言った事を夏希に返されてしまうとは。
また心配かけてしまった。僕は皆に心配をかけさせすぎではないだろうか。
夏希は僕からなかなか離れず、聞き耳を立てると鼻をすする音が聞こえた。
「顔見たらぶっ飛ばす」
「ハイハイ。分かってます」
少し経つと元気が戻り、優しい女の子に戻っていた。
ただ普通には戻らず、怖いからと僕の腕を掴んで帰ることになった。
夏希が最初僕の腕を掴んだ時、美雪先生から冷たい目で見られた。
「やっぱり若い子が良いんだ・・・」
違うからね!僕は美雪先生大好きだから!
弁解しようとすると、夏希から絶対何かありそうなので何も聞いてないふりをした。
一階層の階段が見え、あと少しで戻れると騒ぎ出した頃やっと夏希は腕を離してくれ、一人で階段へと走り出した。
「やっと戻ってこれた!ハルトも早く!」
夏希は振り返り、綺麗な顔で笑いながら僕を手招きした。
その瞬間、階段の横にある脇道から三メートル程の大きな体を持ち、筋骨隆々で軽々と大きなハンマーを振り回している、数分前に見たばかりのはずの緑色のモンスターが現れた。
夏希の背後に現れたのは、いつものゴブリンとは違うゴブリンの上位種。魔王へ進化すると言われるゴブリンロードだった。
そしてそいつは、ハンマーを夏希へ向けてスイングし始める。
僕は瞬時に身体強化を四重に掛け夏希の元へ駆け出した。
だがスピードを出すには距離が足りず、なかなか加速出来ずこのままで間に合う事無く、夏希がハンマーで押しつぶされてしまう。
「ブラスト!!」
自分の体に、一点に強烈な突風をおこす中級風魔法を打ち込み、その勢いでぐんと飛ばされるように加速した。
振り下ろされるハンマーが夏希に当たる前に何とか間に合ったのだが、完全に救出する事は出来ず夏希を突き飛した。
「ごめん」
僕は受け身を取る時間も与えて貰えず、ハンマーを喰らってしまい、ダンジョンの壁に叩き付けられしまった。
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