五秒だ。五秒で終わらせてやる

 「あのバカ共が」


 ダンジョンは珍しく一階層は攻撃をするモンスター達が一切存在しない。だが二階層からのモンスター達は襲ってくる。


 体が発達していない中学生くらいならば、普通にスライムが丸呑みにして殺すことも容易たやすい。

 それだけダンジョンは危険がともなう危ない場所なのだ。


 そんな死がそばにある場所へ、幼稚園児が数人で行くのは殺されに行くようなものだ。

 ほとんど関わりのない同級生が死ぬだけでも辛い。

 そこへ初めて出来た友達のリアムが加わってしまったら、僕は抜け殻のようになるかもしれない。

 絶対に殺させはしない。

 もう前世のように、死を悲しむ人を見たくない。


 「身体強化」

 

 僕は夏希をその場に置いて、先を走る美雪先生を追い抜き全速力で階段を上って階層をまたいだ。


 「リアム!どこだ!」


 子供たちの中で一番危ないのはリアムだ。

 他の子供達はモンスターに襲われても、スライムなどの弱いモンスター達ならば、複数人で救出する事が出来るかもしれない。


 だがリアムは後から追いかけたらしく、一人で居る事も考えられる。

 一人の場合、す術無く誰にも助けを呼べず殺される可能性が高くなってしまう。


 「サーチ」


 僕は短い距離だが、探索魔法を使って子供達を探した。

 洞窟系のダンジョンでは、分かれ道や脇道が多く屋外のように広く探すことが出来ない。

 サーチの探索魔法は、イルカやコウモリみたいに音波に似た物を出していると考えると分かりやすいだろう。

 分かれ道や脇道等障害物が多いと遠くまで調べにくいのだ。


 幸いそこまで遠くない場所に集合しており、美雪先生へ道標を通路に残しスピードを上げてて走り続ける。

 少し走ると遠くの方でうっすらと小さい人影が二組見つかった。


 一組はリアムの居る見慣れた子供組。

 もう一組は昨日散々戦った、緑のモンスターゴブリン達だった。


 「ウォール!」


 僕は遠距離からゴブリンと子供達の間に土魔法で壁を作る。

 そこそこの魔力を込めたので強度に問題は無く、ゴブリン達に破壊される事は絶対に無いだろう。


 「お前ら大丈夫か?」


 目の前に壁が出来上がり、ゴブリン達が目の前に居なくなった事で子供達は安心して、助かったのだと泣き出してしまった。

 そんな中リアムは僕を見ると駆け寄ってきた。


 「ハルトなんでここに」

 「二階層に行った馬鹿どもがいるって聞いてな。助けに来たんだよ」

 「そうか。ありがとう。助かったよ」

 「間に合ってよかった。どっかのリーダー気取りが助けに行ったって聞いてびっくりしたんだぞ」

 「それは悪いな」


 僕は少し意地悪を言うとリアムは笑っていた。

 こんな状況なのに笑えるとはタフなやつだ。

 どうせこいつが、馬鹿どもを支えていいたのだろう。


 数十秒後通ってきた道からは足音が響き、美雪先生が走っているのが見え、無事全員集合出来た。

 美雪先生は一目散に泣きじゃくっている子供達を落ち着かせようと抱きしめた。


 「お前の嫁が取られてるぞ」

 「うっせぇわ」

 「あなたが思うより」

 「違うからな」


 僕達はつまらない身内ネタで笑い、日常の雰囲気が流れた。


 「じゃあちょっと行ってくる」

 「あぁ気を付けろよ」


 僕は歩きながら、後ろに居るリアムを見る事無く手を振り、高く跳躍しゴブリン達がいる壁の向こうへ乗り込んだ。


 「手間かけさせやがって。五秒だ。五秒で終わらせてやる」


 僕は、収納魔法から現相棒の白銀の剣を取り出し、ゴブリンに向けて剣先を突き出す。


 今回のゴブリンは普通で、パーティーを組んで助け合う事はしないらしく、一斉に武器を構えて攻撃をしてきた。


 僕は剣を抜刀の構えで振り抜き、一匹目のゴブリンを裁断した。

 そして、 その勢いで振り上げた剣を下ろし、袈裟斬りにして二匹目を切る。

 三匹目はかなり近くに居たので、剣を離し顔面を手で掴み魔法で電気を流し倒した。

 最後の一匹となり仲間が殺られたのを見て怯え、逃げ出した所を地面に落ちている血が着いて刃が欠けた、ボロボロのゴブリンの剣を投擲とうてきして戦闘が終了した。


 「少しオーバーしたか。感電させたところがロスだったな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る