最強はモテモテ

 「大丈夫?美雪先生」

 

 僕は美雪先生の太ももにくっ付いているスライムを掴み遠くに投げ飛ばした。


 スライムごときが美雪先生の太ももに触れるなんてけしからん!

 僕は触ったのは助ける為に触っただけで不可抗力だからね。

 触りたかったとかでは決して無いからね!


 「ハルト君ありがとう」

 「いえいえ。こちらこそ」


 僕は美雪先生に笑顔で感謝を述べられ、美しさに心が洗われる気がした。

 美雪先生のご利益を感じ、うつつを抜かしていると僕の真後ろから強い視線が突き刺さっていた。


 「この変態」

 「夏希!?いつの間に」


 夏希はいつの間にか僕の背後におり、ジト目で僕を見て軽蔑していた。


 僕が気付かず背後を取られるなんて久しぶりの経験だ。

 この子は良いアサシンになるな。


 「変態変態このド変態!」


 僕はノーマルなので何も思わないが、ドMならば喜ぶだろう言葉を夏希に言われる。

 そしてその言葉の勢いのまま、みぞおちにブローを喰らい一撃でダウンしてしまった。

 流石に魔力ない時にこれはきつい。


 「美雪先生も子供に勘違いするような事しないでください!」

 

 僕だけでは飽き足らず、夏希は美雪先生にも噛み付いていった。


 「勘違いするような事って何かな?」

 「そりゃさっきみたいな、可愛い子ぶってあざとく転んだりとか」

 「可愛い子ぶってないです。それに本当に驚いて転んだのよ」


 夏希は何故かご機嫌ななめになっており長めに怒ってらっしゃる。

 けれど美雪先生はいつも通り、何も思っておらず受け流し大人な対応をしている。


 やっと夏希の猛攻が終わり、場が収まりかけたのだが、ぽつりと呟いた言葉で状況が急変した。


 「本当なんだか。歳的にきついのよ」

 「あれ?夏希ちゃんいけない事が聞こえた気がしたんだけどな?」

 「何?図星だった?やっぱり幼稚園生にそれは厳しいもんねー」

 「もう許しませんよ!それだけは許しません!」


 夏希ちゃんは逆鱗に触れてしまったらしく、美雪先生のクールでお茶目な姿が、駄々っ子のように口を膨らませ怒っていた。

 美雪先生怒り方が子供っぽくて可愛い。


 「何?幼稚園生に本気になってるの?体は大きいくせに中身は子供なんだから」

 「そんなことないもん!中身も大人だもん!ハルト君も夏希ちゃんみたいなちんちくりんより、私みたいな女性ぽい方が好きだもん!」

 「年増のおばさんより同じ歳の私の方が魅力的なはずよ!」

 「誰が年増のおばさんよ!この泥棒猫!」

 「うっさい!女狐」

 「「ねぇ!どっちが好き!?」」


 二人は初めてバチバチの言い合いになり、見た事ないほどヒートアップしていた。

 そして途中で僕の名前が出され、よく意味が分からないままターンが回ってくる。


 迂闊うかつにどちらかへ加担すると、酷い未来が待っている。

 美雪先生を選ぶと、職員室の平和を得ることが出来る。

 だが新しく出来たばかりの、夏希との友情が壊れてしまうかもしれない。

 どちらかを選ぶなんて出来ない!


 「二人とも良いと思うよ」

 「「最低!」」


 どちらを選ぶのが正解なんだよ!


 「二人ともなんて無いの!」

 「そうよ、ハルトくんどちらも選ばないなんて一番酷ひどい事よ」

 「あんた他にも女が居るんじゃないでしょうね!」

 「そうだったの!?ハルト君、私達は遊びだったの?」


 いつからドロドロな昼ドラになったんだ!?

 というか何故僕の取り合いみたいになっているんだ?


 「誰も居ないよ」

 「「じゃあ選んで!」」


 誰か助けてくれ!どうしたらいいんだ!


 その時奇跡的に遠くから助け舟が出された。


 「先生!男の子達がダンジョンの階段登って行っちゃった!リアム君が皆を連れ戻しに行ったんだけど帰ってこないの!」


 ありがとう。僕の事を三股ホスト役にした女の子よ。


 「分かったわ。ありがとう!」


 美雪先生は女の子の話を聞き、すぐに走り出してダンジョンの二階層へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る