遅刻者とオセロ

 「ハルト遅刻よ!」

 「ごめんね夏希ちゃん。ちょっとトラブル起きちゃって」

 「それなら仕方ないわね」


 無事集合時間に遅刻してしまい、悪事には絶対噛み付く夏希ちゃんに愚痴られてしまった。

 

 「許してくれるの?」

 「自分でトラブル起きたって言ったじゃない」

 「ありがとう夏希ちゃん」


 僕は意外とすんなり許してもらえ驚かされた。

 前回の時も謝罪していたので、正当な理由があれば許してもらえる事が分かった。

 いつも勉強してストレスが溜まり、元々正義感が強いタイプで誰にでも噛み付いてしまうのだろう考察する。


 夏希ちゃんの頭を撫でてやると、フェストと同じような表情をして喜んでおり、しっぽがあったら振り回していただろう。

 僕は可愛いなと思い顔を見ていると、バレてしまい頬を赤くし俯いてしまう。


 「夏希って、呼んでもいいよ」

 「ん?」


 ごもごもと夏希ちゃんは話しよく聞き取れず聞き返した。


 「夏希って呼びなさい!」

 「あっ!?うん分かった?」


 夏希は急に大きな声を出して僕の顔に近付き、あと少しで当たるのではと思う程迫り、強く命令をしてきた。

 そして返事を聞くなり、同学年が集合し並んでいる場所に戻っていった。


 咄嗟に了承してしまったで理由を聞きそびれてしまった。今のは何だったのだろうか。

 

 「ハルトくーん!」


 少し考え込んでいると、皆が並んでいる列の先頭で美雪先生が名前を呼び手を招いていた。

 僕は直ぐに駆けつけ、何か言われる前に謝罪をしておく。


 「遅れてすみませんでした」

 「謝れて偉いね。でも次からは遅刻しないようにするのよ」


 美雪先生は膝を地面に付けて目線を合し、頭を撫でてくれた。

 ここまでしてくれるなんて優しい!今すぐ結婚しよう!


 あれ?少し前に似た事があったような?

 どこからか一瞬殺意が飛ばされた気がしたが気のせいだろう。


 「何かあったの?メッセージ送っても返信無いし。心配したんだよ!」


 偽マジックバックからタブレットを取りだし、画面を見ると確かに美雪先生からのメッセージが受信されていた。

 なんだかそのままだと、次見る時気まずくなりそうなのでごめんなさいスタンプを送信しておいた。


 「ごめん気付かなかった」

 「それなら良いけど。何かあったの?」

 「実はダンジョンに向かってる途中男の子とぶつかっちゃって・・・」


 みゆき先生に一連の流れを説明すると、僕の体を全身見回し怪我が無いか確認する。


 「怪我無くて良かった。ぶつかった子も大丈夫なら良いんだけどね。どこの学校か聞いてる?」

 「わかんない」

 「じゃあ話を聞く事も出来ないね」


 もう確認のしようないので、男の子が修学旅行に行けたかは一度忘れることにした。


 「次からは余裕を持って行動するように!」

 「はーい!」


 結局僕が最後だったらしく再度人数を確認して、そのままダンジョンで一番偉い人が全体に挨拶する事になった。

 同学年の子供達が座って静かになると、ブースの方から小走りでスーツの人がやってきた。

 

 「皆さんおはようございます」


 昨日僕達を対応してくれたスーツの人は、子供達に合わせたゆっくりとした話し方で自己紹介を始めた。


 このスーツの人の名前は水戸 雄朱路おすろ。オセロような名前で、ダンジョンへの冒険者の出入りや安全、ドロップ品の買取などのこのダンジョンの管理者をやってる偉い人だった。

 昨日の行動からしても、強い権力を持って居そうだったので特に疑問に思わなかった。

 ちなみに独身らしい。


 オセロさんは全体を見回し、僕を見つけると手を振って来たので、それに合わせて僕も振り返しておいた。

 挨拶が終わりダンジョンへ潜る前、最後のトイレができる時間となりトイレの行かない人は小休憩になっていた。

 お兄ちゃんは現在、フェストと一緒にカメラを持って保護者に向けたライブ配信をしている。

 ちなみに僕の撮影は、自動追尾カメラでするらしくいつも通りのお兄ちゃんだ。

 

 「君はこの幼稚園だったんだね」

 「ええ、今日も迷惑かけますね。オセロさん」

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