大金とお説教

 僕達は長時間拘束され、面倒くさくなりステータスカードを回収し、五歳の自分を盾にとり帰宅出来るようにお願いした。


 「早く帰らないとお母さん達が心配するので帰って良いですか?」

 「ああ。すまなかったね。君達が実力をまえた上で中層に行ったのであれば何も問題は無い。ただ一人でダンジョン探索するのは許可できない。お兄さんと一緒なら許可しよう」


 出来れば、好きな時に一人で潜れる方が嬉しいのだがどうにかならないものか。


 「この子と二人でもだめなんですか?」


 僕は前に出て、頭の上に乗せているフェストをスーツの人に近付かせる。

 フェストはどちらかと言えばオオカミなのだが、音の高い赤ちゃん犬のような可愛い声で、アン!と鳴いてみせ場をほっこりさせた。


 「ダメだ。それじゃ君の実力を測れない」

 「じゃあこれは?」


 僕はただのウエストポーチの中に手を入れるふりをして、収納魔法からホブゴブリンの魔石を取り出して渡した。


 「こんな大きな魔石どうしたんだ!?」

 「僕が一人でホブゴブリンを倒して手に入れた」


 スーツの人は、魔石を袖でこすったり光で透かしてみたりと査定を始める。


 「本物だ。ここまで大きな魔石を初めて見たぞ。でも本当に一人で倒したのか?これだけのサイズなら・・・」


 僕はスーツの人の目を真っ直ぐ内側を透かすように見た。


 「おじさん良いスキル持ってるね」

 「どうしてそれを!?」

 「僕は一人でホブゴブリンを倒した」


 僕の言葉に驚いたが、次の一言で意味を理解してしっかりと聞いてくれた。


 「分かった。君が一人でダンジョンに入る事を認めよう」

 「ありがとうおじさん」

 

 冒険者達はざわめき、子供一人じゃ危ないだろ!と心配の声や、俺達ですら行けないのにおかしいだろと非難の声が上がっていた。

 そんな状況をスーツの人は一喝し、訴えを退け帰宅を促す。


 「この対応を変えるつもりは一切無い。この子の安全は私のスキルを持って保証しよう。君達がここに集まってくれた事感謝する。これからも新人冒険者を思ってやってくれ」


 ぞろぞろとダンジョンから皆が退出していき、その中には悪態をつく物や頑張れよとエールをくれる人も居た。

 いつか僕達の為に集まってくれた、優しい人達に還元出来たらなと思わされる。

 また、自分が上の立場になった時は手を差し伸べようと決めた。


 「少し話出来るか?」

 「ドロップ品の精算の間なら良いですよ」

 

 僕達は、ステータスカードを作成したブースへ誘導され着席する。

 そして本来なら違う場所なのだが、その場でドロップ品を渡し査定をお願いした。


 「あのような大きな魔石を中層で見たのは一度も無い。私はこのダンジョンで異常事態が起きていると考えている。おかしな所がなかったか状況を説明してもらいたい」


 スーツの人に今回のダンジョン探索の内容を全ての説明し、カメラの撮影データも一緒に提出しておいた。撮影データがある事に喜んでおり、査定の値段に情報量として追加するとまで言ってくれた。


 僕達は査定が終了し金額を確認すると、想像していた値段より大きく上回っており声が出なかった。

 僕が倒したゴブリンズの魔石七個七万円。ホブゴブリンの魔石一個十万円。お兄ちゃんが倒したゴブリンの魔石二十個二十万円。杖六本百二十万円。そして情報量として二十万円が入っていた。

 すべての合計金額がなんと百七十七万円だった。


 流石に全体的に貰いすぎだと感じ説明を聞くと、ホブゴブリンサイズの魔石や杖は全く出回っておらず正当な値段だそうだ。

 情報料は冒険者達の命が助かるなら安い方だとかっこ良い事を言っていた。


 流石に今回の騒動で迷惑をかけた手前申し訳なく、百万だけ貰い残りの七十七万はダンジョン協会に寄付をし、このダンジョンの冒険者達に携帯食料の配布や、レンタル武器の整備等に使ってもらうことに決めた。


 残ったのは百万円だけと言ってもかなりの金額で、持ち歩くのは危ないと注意されステータスカードに銀行を紐付けし、直接入金出来るようにしてもらった。

 近いうちに僕も自由に使える通帳を作ろう。

 

 結局帰宅する時間は十九時を超えてしまい、デパートに行く時間も無くなったので、帰り道にあるよく行くケーキ屋さんで適当に見繕みつくろった。


 帰宅後、僕達は案の定お母さんに遅いと怒られてしまい二度目のお説教をくらうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る