最強と心配する冒険者達
「お腹減ったしそろそろ帰ろう」
「そうだね。夜ご飯になる前にお風呂入りたいし帰ろうか」
ゴブリンメイジとのコント後、かなりの時間お兄ちゃん一人で戦闘を任せてダンジョン探索を行っていた。
ゴブリンパーティーとの戦いを見させたおかげで、乱戦時の対処の仕方を覚え剣術をマスターしたといっても過言では無い所まできていた。
残りの足りない部分は、自分で相性の良い動きを探し、体術や魔法を組み合わせる事くらいだ。
次は魔法と体術どちらを教えた方が良いのか考えものだ。
体術を覚えてもらい近接特化にするか、魔法を覚え前衛と後衛の両方を満遍なく扱えるようにするのか迷ってしまう。まぁどちらも覚えてもらうのでゆっくり考えていこう。
「それにしてもゴブリン種以外のモンスター居なかったね」
「やっぱりか。ダンジョンを知らない僕でもおかしいと思ったよ」
お兄ちゃんは今日戦闘を十回程度したのだが、全てがゴブリンであり違和感を感じていた。
元から一種類のモンスターが出るダンジョンならばよくあるのだが、通常のダンジョンが一種類のモンスターしか出なくなる事は聞いた事も無く、違和感を覚えるのは必然だ。
その違和感のせいで、今日は上質な杖が追加で三本の手に入り、合わせて六本集められ金銭的には嬉しいのだが、戦闘面ではスライム系や昆虫系の人型ではないモンスターとの、戦闘経験を獲られずダンジョン探索の成果は微妙といった所だ。
「大金稼げたし何か買って帰ろうか」
「やったー!何買う?」
「んー特に思いつかないからデパート行って探してみるか」
「賛成」
ドロップ品精算後の予定がたち、少し急ぎ足で転移の魔法陣に乗って一層の入口へ戻ると、多くの冒険者が集まており、転移した僕達を見て集まってきた。
「何かあったんですか?」
集まっている冒険者達を見て、やはり中層のゴブリン異常発生で集合しているのかと思ったのだが、想像していた反応と全く違った。
僕達はむさ苦しいおっさんに囲まれ、大丈夫だったか、怪我は無いかと口々に心配されたのだった。
訳が分からない僕達は、何も発言させて貰えず揉みくちゃにされていた。
「困っているだろう。辞めないか」
スーツを着た仕事のできるサラリーマンのような人が一声かけると、辺り一帯が静かになり冒険者の海が割れ、その間を通って近付き現状を説明してくれた。
「君達が中層に転移してしまったと騒ぎになってね。冒険者になり二日目の新人が危ないと皆に声をかけて集め、今から探しに行く所だったのだよ。君達が本当に無事で良かった」
冒険者共々本当心配してくれてるようで、とても申し訳なくなった。
「長い間帰ってこなかったがどうしたんだい?」
「普通に探索してました」
「レベルに合っていないだろう!なぜすぐ戻らなかった!」
急にお説教が始まり、周りの同じように首を縦に降っていた。
「戻る程でも無かったので」
「何を言ってるのだ!君達見たいなビギナーが行く所じゃないんだ!何年も鍛え上げた冒険者が行く所なんだ。皆心配で自分達の命をかえりみず助けようとしていたのだぞ!」
「なんかすみません」
「なんかとはなんだ!しっかりと反省するんだ!しばらくは君達をダンジョンに入ることを規制する。これからは考えて行動するのだ!」
叱られてしまったのは良いのだが、ダンジョンに入れないのは困る!
明日はダンジョン遠足なのだ。何としても撤回しても貰わなければ、美雪先生に迷惑をかけたとばれて軽蔑されてしまう。
「いや、僕達ちゃんと階層ボス倒して中層に行ったんですけど」
僕はステータスカードの備考欄に記入してある、最終攻略階層の欄を名前以外の情報を消し現物化して見せた。
「新人の君達が中層に行けるわけ・・・・・中層まで行ってる!?」
冒険者達はざわつき始め、僕のステータスカードを全体に回し確認し始めた。
一緒にステータスカードを出したお兄ちゃんも奪われて回されてしまう。
ゴブリンメイジも杖を取られた時同じ気持ちだったのだろうか?
帰宅するのはもう少し後になりそうだ。
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