最強はいつでも最強

 僕が負けることは絶対に無い。

 ゴブリンパーティーはバランスが良く、コンビネーションも取れている。

 三匹のゴブリンファイターでも隙が少なく、更に魔法のサポートに未知のホブゴブリン。

 そこら辺の冒険者では一溜りも無いだろう。


 だが相手が悪かった。

 相手が僕でなければ長く生き進化を遂げ、各々が魔王クラスの化け物ゴブリンパーティーが出来上がっていたかもしれない。

 世界を脅かしていたかもしれない。

 本気の僕と良い勝負できたかもしれない。

 負けていたかもしれない。

 だがタイミングをが悪かった。

 相手が最強でなければ。


 現状の僕が全身に魔力を覆えば、ゴブリンパーティー全体から同時に最大火力を食らっても傷一つ付く事は無い。

 ならばわざと魔力を抑えて戦い、格上の敵と戦う為の知識を、お兄ちゃんに付けさせることにした。

 残り少ない命。少しも無駄にせずお兄ちゃんのかてになってもらおう。

 お兄ちゃんと冒険者の命の為に。



 僕は剣を構えず脱力して地面に向かって下ろし、挑発するように真っ直ぐに歩いた。

 近付く僕を見たゴブリン前衛組は、武器を構えて突撃してくる。

 ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジの後衛組は、遠距離で様子見の攻撃をした。

 二本の矢が飛び、十本程度の火と水のアロー魔法が放たれ矢の弾幕が貼られる。

 僕は二本のショートソードに魔力を集中させ、一本一本全ての矢を切り落とした。


 全ての矢をさばき、突撃するゴブリンファイターとホブゴブリンの前衛組が襲いかかる。

 上下左右様々な方向から攻撃されるが、全てを最小限で受け流す。

 そして攻撃を流した隙に、腕や足へと攻撃していく。


 ゴブリン前衛組は傷が増えていき、僕は無傷のまま圧倒していると、ゴブリン後衛組の誰かが声を出し命令をする。

 そのまま何も起きず十秒程の斬り合いをし、ホブゴブリンが周りとタイミングを合わせ大振りの攻撃をする。

 その一撃を弾き返すと、近くに居たはずのゴブリン前衛組の全てがサイドに避けていた。


 ホブゴブリンの体の後ろには、二匹のゴブリンメイジが多くの魔力を集め魔法を詠唱していた。

 片方のゴブリンメイジはファイヤーアローの上位魔法、ファイヤーランスを放つ。

 そしてもう片方は嵐をのような風を起こす風の上位魔法のストームを、僕の方向に細い竜巻状にしてファイターランスを加速させるように使う。


 二匹のゴブリンメイジの合成魔法は、熱気を辺りに飛ばしダンジョンが揺れるような高威力の一撃を撃ち込んだ。


 僕はそれ対して、両手にあるショートソードの魔力を右に全て集め、全力で上段から振り下ろした。

 僕の一振は合成魔法を真っ二つに切断しかき消した。

 そして振り降ろした直線上に居た、ゴブリンメイジに斬撃が飛び、胴体が縦に分かれ崩れ落る。


 唯一攻撃していなかったゴブリンアーチャーは、二つに分かれた仲間を見てすぐさま矢を放とうと構えたが、先端に魔力を込めた投げナイフに眉間を貫かれて倒れた。


 二匹が死にゴブリン前衛組が切り掛って来たが、最初のような鋭さは無くゴブリンファイターの隙だらけの小さな体を刻み、残りはホブゴブリンとゴブリンメイジの二匹になる。


 ゴブリンメイジは、捨て身で長めの魔法の詠唱をし、ホブゴブリンは大きな体からゴブリン特有の木製バットを振り下ろす。

 ゴブリンファイターの足止めも無く、脅威の感じない大振りを容易たやすく避け、腕を切り落とし木偶でくの坊にした。

 そして一匹になったゴブリンメイジは、稼いでもらった時間で詠唱を終わらせ最後の魔法を撃った。


 僕は戦意を無くし、膝立ちになっているホブゴブリンを蹴り上げ魔法の盾になってもらい無効化しゴブリンメイジを斜めに袈裟斬けさぎりをした。

 仲間の魔法を受け、倒れ込んでいる最後の一匹へゆっくりと向かい首を切り落とす。


 僕は一度も攻撃を受ける事無くゴブリンパーティーとの戦闘を終了させた。

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