無双ゴブリンパーティーと最強の余裕

 僕はフェストを抱っこし、移動し続けていたのだが段々ときつくなっていた。

 重さ的に全然大丈夫なのだが、腕を上げ続ける事が出来なくなってきていたのだ。


 「なぁフェストアニメみたいに肩とか頭に乗れないか?」

 「乗ってみるー!」


 フェストはなるほどといった顔をして、腕の中から這い出てよじ登り肩で一息つく。


 「グラグラする」


 肩はお気に召さないようで今度は頭に登り座った。


 「ちょっと小さい…」

 「じゃあフェストが小さくなれば良いんじゃない?」

 「そっか!」


 フェスト今までの子犬サイズから、赤ちゃんサイズまで小さくなりクルクルと頭の上で回って、丁度良いらしく丸くなりリラックスし始めた。


 見た目が犬の赤ちゃんなのだが、よちよちした動きでは無くしっかりと自立した動きで赤ちゃんらしさが見れず、パッと見人形やおもちゃのようだった。


 「人形みたいだな」

 「可愛ね。てか小さく慣れたんだな」


 収納魔法から手鏡を取り出してフェストを眺め、本当にダンジョン内なのか疑わしい程ほっこりとした空間で癒される。


 「よし!次は僕がやろうかな」


 癒されたのは束の間でモンスターの気配を感じた。

 前方にある子供が頑張って通れるくらいの小さな脇道から、ドタドタと複数のモンスターの足音が聞こえ、ダンジョン内をこだました汚い鳴き声が近付いていたのだ。


 「またゴブリンか」


 今回のダンジョン探索で一度もゴブリン以外のモンスターに合わず、ゴブリンとの遭遇率が増えていた。


 「何かありそうだな」


 脇道からは、最初に出てきた短剣を持った三匹のゴブリンファイターが特攻し戦闘が開始された。


 二匹のゴブリンファイターが同タイミングで僕へ両脇から攻撃し、その間のから残ったゴブリンファイターがタイミングをずらし攻め込んでくる。

 三匹のゴブリンファイターは、お兄ちゃんが討伐したゴブリンメイジのと同じように高い知性を持ち戦闘慣れしていた。

 まるで人間のようなコンビネーションを使い的確に殺しにくる。


 僕はショートソードを一本追加し両手に持ち、両脇のゴブリンファイターの攻撃を受け流す。

 そして前方のタイミングをずらして攻撃している、残りの一体の攻撃を左で受止め右手でとどめを刺す。

 綺麗に動きが決まり完璧にとらえたと思ったのだが、その攻撃は決まらなかった。


 剣を振りかざした瞬間前方から魔法が数発飛んできたからだ。

 僕は咄嗟とっさに直撃する魔法を切り、大きく後ろへジャンプして一呼吸入れる。


 「ハルト大丈夫か!?」

 「大丈夫。全部捌いた」


 

 ゴブリンファイター達から一度距離を取り全体を見てみると、ゴブリンファイターの他にも後から来たホブゴブリンにゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジと複数のゴブリン種のバランスの取れたパーティーが集まっていた。


 「これは異常事態じゃね」


 前世でもゴブリンが複数で襲って来る事があったが、それはパーティーとしてでは無くゴブリンの群れとしてだ。

 指揮を取り襲っているのでは無く、襲えとボスに命令されて動いた個の集団だ。

 その為動きが個人であり、背後からフォローが飛んでこず対処は簡単なのだ。


 正確にはフォローが飛ばないでは無く、フォロー出来る程の知能を持つ低級ゴブリンは存在しない。

 だが今回はパーティーで行動し、ゴブリンメイジが助ける為に各々まるで人間のように魔法を使ってきた。

 

 今世でこのゴブリンパーティーを討伐できるのは、熟練パーティーかお兄ちゃんを除いたレベル三の二人だけだろう。

 こんなゴブリンパーティーが中層をうろつきだすと、全ての冒険者が消滅してしまう危険性がある。

 今ここで殺すしか冒険者の未来が無い。


 「お兄ちゃん。フェストを持って見てて」


 僕は、お兄ちゃんに頭の上に座っているフェストを渡して傍観に徹してもらった。

 

 「倒せるんだよな」

 「超余裕です」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る