社長とマジックバック
ダンジョン遠足まであと一日、いつも通りのゆっくりとした時間が流れていた。
「フェストまた散歩に行くか?」
「ハルト辞めとけ。次で三回目だろ。疲れちゃうよ。一応凄いモンスターでも家族なんだから、優しくしてやれ。それにもうすぐお客さん来るんだろ」
フェストを見るとシッポをブンブンと振り、散歩に行きたそうにしているが、お兄ちゃんに止められてしまい、見るからに残念がりその場で丸くなって眠りについていた。
「どんな人が来るんだ?」
「内緒。でもお兄ちゃんも知ってる人だよ」
「いい加減教えてくれよ」
お兄ちゃんにはお客さんが来るとだけ伝えて、どんな要件で誰が来るか伝えていない。
面白い反応が見れそうだなと思いわざと伝えていないのだ。楽しみで仕方がない。
少し時間が経つとインターホンが鳴り、予定通りのお客さんがやって来た。
僕は玄関を直ぐに開けて家へ通し、お兄ちゃんと対面させた。
「初めまして。君がハルト君のお兄さんかな?僕の名前は」
お兄ちゃんは顔を見るなり過去一の驚きを見せ、口が半開きになりフリーズしていた。
そしてすぐさま目を輝かせて、近付いていった。
「いえいえ!存じております!ダンジョン関係の会社で色々な成果を出し続け、ナンバーワンの実績を持つダンジョン総合株式会社の
お兄ちゃんの説明通り、前沢社長はかなり凄い人でありダンジョン業界だけでは飽き足らず、メディア進出までしており動画配信サービスでも名を轟かせている有名人なのだ。
最近では新しい商品の予約を開始した所、一分で完売したとの事でニュースになっていた。
「そこまで知ってくれてるなんて嬉しいよ」
「そりゃ有名人ですから。それにしてもどうしてこんな所に!?」
「君の弟さんと仲良くさせて貰っていてね、お兄さんの話を聞いて是非とも仲良く出来たらと思って尋ねさせてもらったよ」
有名人に会えて大興奮しているお兄ちゃんは、社長を質問攻めにし通行止めにしているので一度静止させた。
「とりあえず中に入って」
社長には椅子へ座らせ、早速本題に入らせた。
「この前ハルト君とお話している時、君の活躍を聞かせてもらったよ。是非とも私達の商品を使ってもらいたくてね。お邪魔させて貰ったんだよ」
社長はビジネスバッグから、ダンジョン総合株式会社の丸にMが入ったロゴが付いた、小さめサイズで革のウエストポーチを取り出し机の上に置いた。
「これはもうすぐうちの会社で発表するマジックバックというもので、バックの中に異空間がありそこにアイテムを収納することで、収納量を格段にアップさせることが出来るバックなんだ。それを使ってもらい宣伝して欲しいのだよ。もちろん使ってもらう以外に対価は要らない。気に入らなかったら捨ててもらっても構わない」
お兄ちゃんは今までで一度も聞いたことのない説明を聞き、いまいちピンとこない様子だった。
ただ何となく凄い物だとは分かっており、恐る恐るマジックバックを手に取っていた。
「この場で付けてもらって構わないよ。その外装も最近発表して販売する前のものでね。使用感の感想を教えて欲しい」
お兄ちゃんは、マジックバックを腰に回して付け軽く動き回ってみたが、なかなかの物で動きを阻害しないようになっており、一般的なバックに比べて使いやすそうだった。
「動きやすいですね。それに軽くて使いやすい。これなら良いのではないでしょうか」
ウエストポーチの感想を聞き、社長は嬉しそうな反応していた。
ウエストポーチ自体、本当に発売しようとしていたのだろう。
僕のお願いのついでに、元々発売前のウエストポーチの宣伝させるとは、なかなかの商売気の強さだ。
「そうかそれなら良かった。実はね君達二人は次から中層に行くと聞いてね、その中にプレゼントの武器が入っているんだ。その武器もまだ誰も加工していないであろう、新しい素材で作っているんだ」
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