マジックバックと依頼
「それはどのようなものなんだ?」
僕は座っている椅子に置いているサイドポーチを見せ、その中に入っている刀やお菓子タブレットなど入るはずのない量を取り出して見せた。
「なるほど。先の説明通り異空間に収納しているのか。これがあれば全人類にとって大きな革命だろうな。是非とも手に入れたい一品だ。こいつをいくつか売ってくれるという訳だな。ちなみにどのくらいあるんだ?」
社長は間違った解釈をしたようで話を進めようとしたが静止させ正しく説明をする。
「いや違う。それならたまたま手に入れただけだろう」
「と、言うと?」
僕は社長のビジネスバックを奪い取り、サイドポーチから一般的な何も変哲もないハンコを取り押し付けた。そのハンコには魔力を大量に含んでいる特殊なインクが着いており、赤く文字が写されたがゆっくりと溶けていき、何も残らず元の綺麗な姿に戻っていく。
社長は何が何だかと言った感じだが、ビジネスバックの中を確認した。そして裏返して何度か振り、出そうとして見せた。
「これはすごいな。中にあったもの全てが無くなっているじゃないか!」
「欲しい物を考えて手を入れたら取り出せるぞ」
ビジネスバックに手を入れ、抜き出すとその手にはスマホが握られていた。
「私のビジネスバックが、マジックバックに早変わりじゃないか。つまりそのハンコはマジックバックを作るアイテムで、うちの会社に製造を任せてくれるという事だな」
「そうだ。ちなみに使用回数や入るアイテムの量を調整したり出来る。例えば少量しか入らないけれど安いマジックバックだったり、無限のように入る高額のアイテムバックだったりと自由自在だ。更に回数の制限を付ければ消耗品になる。他社がマジックバックを作れるようになるまで独壇場だろうな」
社長はビジネスバックの全体を見直し、僕に目を向け戸惑った様子で尋ねてくる。
「本当に良いのか?起業すればマジックバックだけで大企業だぞ。勿体なくないか?」
その返答を僕は、余裕のある表情でした。
「この程度の物ならいくらでもある。だが友好の印には十分だろ。それに社長には期待しているし、早く大きくなってもらいたいんだよ」
社長はどんな対価を要求されるのか、僕の事を恐れたようだった。
「それは一体?」
「時が来たら教えよう。ひとまずはケーキを頂こうか」
僕と社長の前にはケーキが用意された。社長には一切れのチョコケーキ。僕の前には色々な種類のケーキが、一切れずつ丸くホールのようになっていた。それはまさに芸術のようだった。
僕は贅沢に一口ずつ回しながら食べた。あまりにも美味しく一瞬で無くなってしまった。
「どうだ社長。僕のお願い聞いてくれるか?」
社長は覚悟が決まり僕の問いに即答した。
「もちろんやらせてもらおう」
僕が手を出すと社長は、相手を立てるように両手で挟み握手をした。
「詳しい説明だが現段階最強の武器を作ってもらいたい。武器は剣で頼む。スキルの付与はしなくて良い。それをサンプルとして持ってきたマジックバックに入れ、お兄ちゃんにプレゼントしてくれ。マジックバックは後日渡す。それを木曜日までにお願いしたい。マジックバックはこのハンコと同じものを・・・」
詳しい要望と詳細を説明していると時間が経ち、ホテルから退出する事になった。
「何かあったらメッセージを送ってくれ。金曜日には必要だから短い期間しか無いが頼む」
「それまでには必ず終わらせよう。期待して待っていてくれ」
僕は黒塗りの車で家まで送ってもらい、楽しいデザートタイムが終わった。
ちなみに車の中ではお持ち帰りしたケーキと、コンビニスイーツを話しながらずっと食べていた。
「社長には大きくなってもらって色んな美味しい食べ物を奢ってもらわないとな」
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