ホテルに着いてきてくれるかい?
「お久しぶりですハルト様。お電話頂けて嬉しく思います」
「かしこまらなくても良いのに。久しぶりお金持ちのおじさん。じゃなくて社長」
「前回通りおじさんで大丈夫ですよ」
僕が呼び出したスーツを着込み仕事の出来そうなおじさんは、公園でアクセサリーショップのおままごとをしていた時に、僕の作ったアクセサリーをホテルのデザートと交換してくれた人だ。
「話しにくいから普通に話して。じゃないと何も相談しないよ」
「も、申し訳ありません。いえ分かったよハルト君」
社長へ少し強めに圧をかけてやると、全身から汗が吹き出していた。直ぐに話し方を修正したので圧を消してやると、ハンカチを取り出し顔に押し付けていた。
「今日はどんな用で?」
「その前に移動しないか?ここ商談には無理があると思うからね」
僕が二人の待ち合わせ場所に選んだの、前回知り合った公園だ。
「実は予約している場所があってね。前回とは違う所だけど二つ星のパティシエが作っているケーキがとても絶品なんだよ。今すぐ食べたくてね、着いてきてくれるかい?」
「よく分かってるじゃないか。連れて行ってもらおう」
仕事のできる人は相手の意図を
ホテルに到着するとエントランスには何十人もの人が並んでいた。そして支配人らしき人が出迎え社長に挨拶に来る。
「大事な商談だ。また今度にしてくれ」
社長は渋い声で追い払い、その場でケーキを注文して早く持って来るように急かし、テーブルに案内してもらった。
「なるべく早くなるよう急かしたので、それまでお話を聞かせて貰おうかな」
「早速だな」
「実は無理を言って量を作ってもらっているのだけど食べるかな?」
「仕事の話をしよう」
社長は僕の考えた事が読めるように手玉に取られている。まぁウィンウィンなら良いだろう。
話を始める前に、聞かれるとまずいので僕達の周りに結界を貼っておく。
「実は僕のお兄ちゃんが冒険者デビューしたんだよ。それで武器を作ってもらいたくてね。一番強い武器をお願いしたい」
社長は少し
「ハルト君ならわかると思うのだが、数日前に冒険者になった初心者に強力な武器は成長を阻害してしまうと思うのだが」
僕はわざと鼻で笑い意地悪な顔で告げた。
「初日で低階層の階層ボスを攻略しレベル三になった者に必要無いか?」
社長は机を強く叩いて驚き、その勢いでグラスを落とし割ってしまった。一言謝罪して割れたグラスを片付けもらい、新しいグラスの水を飲み干し落ち着つかせている。
「それが本当ならば歴史的偉業じゃないか。それは本当なのか!?」
「信じるか信じ無いかは任せるが、これを見てもらおう」
僕はステータスカードを作成し、名前とレベルを見えるように設定して社長に渡した。
「僕はレベル百九十五だ」
社長は何も言えなくなり、空のグラスを口に付け傾けていた。するとグラスには即座に補充され、一気飲みして無理やり落ち着こうとしている。
「君はそこまでの人物だったのか」
「なんだ。疑わないんだな」
予想していたが社長は全く疑おうともしなかった。
「このような無駄にスケールの大きい嘘はつかないでしょう。それならば兄がレベル三でも納得いく。いや逆に普通に見えてしまいそうだ。一応最強と呼ばれる部類なのだがね」
そうなのだ。僕のレベルが高いために霞んでしまうが、新しく潜った界隈で初日にトップスリーになる男だ。僕が教えたとしても普通の人間なはずがない。
「そこでだ。これから戦っていく相棒を社長の所でお願いしたいんだ。君の所のロゴ入りでだ。実はな、お兄ちゃんは動画配信でもかなり有名人なんだ。その意味が分かるな」
「なるほど。広告をつけるからタダで武器を作れという事だな」
物分りが早くて助かるな。
「それだけでも元は大量に取れるだろう。すまないね、僕はお金が無くて。ただそれだけでもいいのだが、これからも仲良くしていきたいから、最先端のダンジョン専門会社として最高のブランドを提供したいと思ったんだよ」
「最高のブランドとは?」
「世界初の異空間にアイテムを収納出来るマジックバックだ」
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