初ダンジョン攻略
「お兄ちゃん武器何にした?」
「んーよく分からないから普通の剣にしようかな」
「じゃあ僕はショートソードかな」
僕達はダンジョン攻略の前に武器をレンタルすることにして相棒となる武器を探していた。
正直僕はレンタルする必要は無いのだが、急に愛刀を取り出したら驚かれるので、お兄ちゃんに体の使い方を覚えさせるために、体の比率にあった武器を探している。
「ちょうどいいのあった」
特に変な所の無い量産的なショートソードを鞘から抜き、刃こぼれ等を確認し装備する。
「じゃあ行ってみようか」
この遠足でも行くダンジョンの低階層はモンスターが攻撃してくる事が無く安全で、階層を降りても急激にモンスターが強くならないので、安全に強くなるためには最適なダンジョンだ。
報酬的な旨みはほとんど無いがそれ以上に役に立つダンジョンだ。
強くなり階層を降りてしまえば、未だに攻略されていない中層や下層に深層まである事が鑑定で分かっている。
安全と夢やロマンが詰まった、全ての冒険者にもってこいのダンジョンだ。
「最初は誰が戦う?」
「じゃあここら辺のモンスターは攻撃してこないし、予習してきたから僕にやらせて」
本当は予習もクソも無いのだが、手っ取り早く中層近くまで行きたいので、お兄ちゃんには少し待っていてもらおう。
下の階層に繋がる階段を一直線に進んでいると、モンスターが複数体で現れた。
今世初めての戦いはスライム達だった。
クリクリとした目で僕たちを見つめ同情を誘おうとしてくるが、今の僕にはただのサンドバックにしか見えない。
「僕達は悪いスライ」
僕は
何か言いたげなスライムは何もなかったのように魔力へとかえっていった。
モンスターは強力になるほど、大きな魔石を残して死んでいく。
魔石は大事な資源なので高く買い取ってくれる為に必ず持ち帰る。
モンスターの素材は収納系の魔法やスキルを持っていないと多く持ち帰れないので、必要な部分や高く売れる部分だけを持って帰る。
そして剥ぎ取られたモンスターの死骸は放置され少し時間が経つと、ダンジョンに飲まれ魔力となり新しいモンスターを作る元の魔力となる循環を繰り返す。
僕の場合は全て持ち帰ることが出来るのだが、スライムは強さは一番下なので魔力をほとんど持っておらず、魔石も素材も残さず消えていってしまった。
「こんなもんかな。お兄ちゃん見てた!?」
「ああ!しっかりとカメラで抑えてたよ!」
お兄ちゃんはカメラを構えて、僕の姿を移していた。
「しっかり見てよ.......いややっぱり撮ってた動画見せて」
お兄ちゃんが撮影した動画を見ると、僕の動きがしっかりと写っておりブレることなく流石の技術だった。
さらにカメラはスローや何度も再生が出来るので、数回太刀筋を見せなくても良い事に気付き、化学の発展に感謝を覚えた。
「この剣捌き凄くない!?」
わざと大きく主張し上手くいったから見て、と自慢する子供のように何度もお兄ちゃんに見せ付けスキルにコピーさせた。
実際にカメラの中の僕の動きで大丈夫なのか分からないかま、試しにお兄ちゃんにも戦ってもらおう。
「お兄ちゃんまたスライムが居たよ!次は僕が撮ってるから戦って!」
「しょうがないな!お兄ちゃんもかっこいい所を見せよう!」
お兄ちゃんはスライム達に僕の太刀筋と
僕はこの太刀筋を出せるまでに何十年と掛けたのに、一目見ただけで覚えてしまうのは悲しくなるが、お兄ちゃんだったらそこまで辛くは無いと思ってしまった。
逆にどこまで出来るのか、興味を持っている自分もいる。
全て動きを覚えてもらい、僕の練習相手になり共に成長していきたい。
僕達はスライムを倒した後モンスターに出くわす事無く、一つ下の階層に降りていくことになった。
「大丈夫かな?まだ一回しか戦ってないのに階層を下りるなんて」
普通ならばもっと一階層で武器に慣れる事が大事なのだが、お兄ちゃんが僕の動きを真似したあの動きだけあれば中層に潜っても生き延びる事が出来る程の動きだ。
それだけ一回の戦闘で、大事な部分を詰め込んでおいたのだ。
そこからは駆け足で進み、攻撃してくるモンスターを倒して素材は無視し中層の手前まで来ていた。
僕達の目の前には今まで一度も見なかった、大きな扉が建っていた。
「ハルトここなんか変じゃない?」
「多分この低級階層のボスなんじゃないかな?」
もちろんこのダンジョンの階層ボスも調べてある。
今回の階層ボスはゴブリンだ。ここまでに会ったモンスター達とは違い、多少の知識を持ち舐めていたら大怪我になってしまう程の力を持つ、初心者キラーと呼ばれるモンスター達だ。
だがこの階層の下からは、階層ボスのゴブリンが通常のモンスターとして襲ってくる。
この程度のモンスターを倒せないと、次に勧めないという仕組みだ。
「じゃあ行こうかお兄ちゃん。あれだけ戦えれば余裕だよ」
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