ステータスカード
「ハルトそろそろ家出るよ」
「はいはーい」
今日は月曜日。歌の発表会が土曜日行われ、振替休日となっている。
珍しく平日の人通りの少ない道をフェストを含めて、三人で散歩では無く歩いた。
「今日はダンジョンの行ける階層まで行ってみる?それとも遠足の楽しみにしとく?」
僕達は来週にあるダンジョン遠足で潜入するのに必要なステータスカードを作成する為、僕とお兄ちゃんはダンジョンに向かっていたのだ。
ちなみにお兄ちゃんは、僕のダンジョン遠足を撮影したいと園長先生に掛け合い、学年全体を撮影してくれるならとの事で許可が降りた。
そのためお兄ちゃんもステータスカードが必要になったのだ。
「いや今日は出来るだけ奥まで進んでおきたいかな。危ない所だから、トラブルに巻き込まれても対応できる人が多い方がいいからね。それにお兄ちゃんなら直ぐ下層まで行けると思うし」
お兄ちゃんは僕を意外そうな顔で見つめてきた。
「いつもぼーっとしてるか食べてるかだと思ってたけど、意外と考えているんだね」
お兄ちゃんよ!ちょっと酷くないか?
「そんな風に思ってたの!?これでも大学卒業レベルの勉強は終わってるんだからね」
不機嫌なふりをして僕とフェストは、魔力を使わない状態の全力でお兄ちゃんを置いて走り去ってやった。
「ハルト待ってよぉぉ」
結局ダンジョンまでノンストップで走り、一度も待ってもらえる事は無かった。
「ごめんって。もう意地悪言わないから」
「デザート一つね」
僕達三人はダンジョン入口の案内受付へ並び二、三十分ほど待ち案内係に今日の目的を話して、ようやくダンジョン周りにあるブースに誘導された。
ブース内のお姉さんに長い説明を受け、個人情報や同意書を書類に書きこみ無事にダンジョン潜入の許可が下りた。
その後ステータスカード作成が行われ、そのためには丸い水晶のマジックアイテムに手をかざしステータスカードを作成しなければならない。実際に丸い水晶のマジックアイテムに手をかざすと、僕達の目の前には半透明でA4サイズ程のステータスが展開された。
ステータスには名前にスキルやレベル、例外のテイム情報等は備考欄に記載される。
皆気になるのはスキルとレベルだろう。
相変わらず僕のスキルは(?????)と(ファミリア)の二つだった。後天的に手に入れた(ファミリア)意外何も分からなかった。
お兄ちゃんのスキルは変わらず(トレース)と(付与)の二つで優秀だった。
レベルは一だったがこの世界では当たり前で、未だに戦闘経験が無いためレベル一しかないが、体とスキルの使い方を覚えれば無難にレベル七は超えてくるだろう。
一般的にレベルの表記は一で初心者、二で中級者、三で上級、四は上位数パーセント、五は英雄や伝説と言われるほどの活躍をした人物に少数見られる程度、それ以上は神からの使徒や神獣達に認められた者。人間を辞めたと言われる部類とされている。
そして僕の今のレベルは、とうの昔に人間を辞めたとされる値に達していた。
線崎春斗 レベル百九十五
前世ではカンストしており、レベル百で打ち止めだった。
だが何故か今世ではレベルの上限無くなり、二周目が終わりかけようとしていた。
恐らく無限に湧き出てきたアンデッド達で、沢山の経験値を稼いだのであろう。
とりあえずこれからの目標は、レベル二百を超える事だ。
レベル二百で限界なのか、その続きがあるのか調べてみたい。
今世はどのように成長していくのだろうか。
楽しみで仕方がない。
「すみません。この子を連れていきたいのですけど」
僕は揃えた足の上で座っているフェストを抱きお姉さんに見せた。するとフェストはあざとく甘えた声でアン!と鳴いてみせた。
「可愛い!じゃなくて動物を連れていくのは大丈夫なのですが、ダンジョンに入る前に一度動物かモンスターのどちらなのか簡単な検査を受けて貰わないといけません。動物だった場合は良いのですが、モンスターだった場合ちゃんとテイム出来ているのかステータスカードで確認した上で、野生のモンスターと間違われないようにダンジョン協会の印の入った装備を付けて貰う事になっています。本日ダンジョンに入るのであれば、検査を受けてもらう事になりますがよろしいですか?」
「お願いします」
お姉さんは一度ブースから離れ、虫眼鏡のようなマジックアイテムを持ってきてフェストを覗いた。
「あっ!一応モンスターみたいですね。モンスターですと現状テイム状態でないと許可できませんので、どちらかステータスの方でテイムになっていませんか?」
僕のステータスの備考欄にしっかりとテイム状態のフェストの名前があり、名前と備考欄のみ見えるように設定して、お姉さんにステータスカードを提出した。
「はい!確認取れました。ダンジョン協会の印入りの装備品があるのでそちらを付けて頂ければ完了となりますので、少々お待ちください」
お姉さんは再度離れ、重そうにダンボール持って来た。このダンボールの中から選べとの事だ。
適当に探したがパッと来るものが無く、シンプルな首輪にすることした。
その後は特に何も無く、武器を購入するまでは受付で破損させない限りレンタルできるので借りてくださいとの事だった。
「すみません最後に一つだけ良いですか?」
お姉さんは今までと違った雰囲気で僕達にお願いをした。
「なんでしょう?」
「その子撫でさせて貰ってもらえないでしょうか?」
フェストは一言吠えお姉さんの足元に擦り寄って行った。
その後数分間撫で回され、幸せそうなフェストが帰ってきてダンジョンの初攻略に進むことになる。
僕は初めてのダンジョン攻略が、楽しみで仕方ない。
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