最強は初めて歌う
音楽室に到着すると美雪先生がピアノで伴奏し、僕は初めての歌の練習が始まった。
最初にお手本として歌ってもらい、曲を覚える所から始めた。
美雪先生の歌は実は音痴だった、とかは無くしっかりと上手だった。
もしかして、かなり高スペックなのではないのだろうか
「こんな感じの曲です。じゃあ次は実際に歌詞を見ながら歌ってみましょう」
僕は歌詞の書いてある楽譜を貰い、一度読んでしっかりと覚えているか確認し返却をした。
「覚えたから楽譜いらない」
「でも今初めて聞いたはずじゃなかった?」
「今聞いて覚えた」
「あっそうなんだー」
美雪先生は何故か遥か遠くを見つめ、真顔になっていた。その姿は何か思考を放棄したようだった。
「じゃ歌ってみましょうか」
「はーい」
僕は伴奏に合わせて人生初めて曲を、しっかりと歌いました。
ですが、美雪先生の歌と同じように歌ったはずなのですが上手には聞こえず、下手くそに聞こえました。
そして僕は喉に少し違和感を感じ、手で押えます。
「あれ?」
「声と音が合っていないのね。もう一度歌ってみようか」
あまり上手に声を出す喉の使い方が分からず理解に苦しみました。
なかなか解決策が出ず美雪先生に質問します。
「なんか音が合っていないと喉に違和感があるの」
美雪先生は上を見上げながら、少し考え込んだ様子で質問した。
「ハルト君は私の声を真似して歌ったんじゃない?」
「そうだけど?」
「やっぱり!声似てるとおもった!」
美雪先生は声を上げスッキリとした顔で説明してくれた。
「人には人の出しやすい声があるのよ。無理やり私の声を真似ても喉痛くなるだけだから、歌いやすい声を探してみましょう。後は自分の歌っている声を録音して聞いてみるとかはどうかな?結構思っていた声とは違うものよ」
なるほど。自分にあった声か
同じ声を出せば上手に聞こえるだろうと、簡単に考えていたが意外と歌う事は奥が深いらしい。
剣の流派や魔法の属性のように、全員が同じものでは無いので一番相性の良いものを選ぶ。
それと同じようにその人に合った声、歌いやすい声を発声しないといけないようだ。
「じゃあ歌う前に自分の声を探すところからしましょうか。私に合わせて声を出してね」
美雪先生はあの一音を遠くに飛ばすようにして、音程を変化させ喉を開き、声を知る為の発声練習を教えてくれた。
そして僕は真似するようにして、自分の歌いやすい声と、声の出し方を覚えた。
「じゃあ今度は二、三回ごとに録音して聞いてみようか」
録音して発声練習を数回繰り返していくと、
僕だけの歌い方が大体分かってきた。
「美雪先生一回歌わせて」
人生の二回目の曲を歌ってみると、かなり良くなっており自分でも上手くなったとわかる程に実感出来た。
「凄いね!もう完璧じゃん!ハルト君凄い!」
美雪先生は僕の歌を聞くと大はしゃぎし、両手繋ぎブンブンと上下に振り回される。
「でも私に出来てハルト君に出来ない事無くなっちゃったな」
美雪先生は今まで大はしゃぎしていたのに、テンションが突如急降下し残念そうな顔になった。
「美雪先生優面倒見良いし可愛いじゃん」
「可愛い?」
「可愛い!」
「本当?」
「本当!」
美雪先生は何故か言われ慣れてないのか頬を赤くし、とろっとした笑顔になり心底嬉しそうにしていた。
歌は完璧に仕上がり教えてもらう事が無くなった頃、特進クラスの授業の時間になりまた職員室待機になった。
一時間ほど経ち昼食タイムとなりました。普通のご飯と違う、とても美味しいお昼ご飯を食べてお昼寝タイムに入る。
いつもだと寝ないのだが気持ちよかったので、ぐっすり寝込んでしまい起こされても起きない程熟睡してしまい、結局お母さんのお迎えが来るまで目覚めることは無かった。
翌日からは美雪先生の答え合わせをして、同学年全体の歌の練習に混ざりそれ以外の時間は、職員室で過ごすようになり発表会当日になった。
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