入園と三股のホスト

 「ハルトー!早く準備しなさい!」

 「ちょっと待って!」


 僕は今制服を着ています。

 今日は入園日です。

 他の人とは違う日に入園するので、緊張しております。上手に挨拶できるか心配です。


 という事は無く普通に面倒臭いです。


 僕には教えられる事が無いらしく、勉強が一番進んでいるクラスに属しているけれど、好きにしてもいいと特例が出されました。

 やること無くて暇だろとの事で、タブレットの持ち込みも許可されました。

 なのでいつも通りタブレットで動画を見て、ゴロゴロしたいと思います。

 だったら家でええやん!


 「おはよう!ハルト君!」

 「美雪先生おはようございます!」


 幼稚園に着くと、美雪先生が門の前で竹箒を持ちお掃除をしていたので挨拶する。

 幼稚園来て良かった。


 「今日どうするの?」

 「じゃあ皆が集まるまで職員室に行こうか」

 「はーい」


 僕はお母さんと別れ、美雪先生と手を繋ぎ職員室に向かった。


 「線崎春斗です。よろしくお願いします」


 職員室で適度に挨拶をして、足の高めの椅子が美雪先生の横に用意されたので座った。

 すると色んな先生が僕を囲んで質問攻めにした。

 僕は園内で特別対応になった為、テストの結果が全体に報告されたのだ。

 どうやって勉強したのかだったりいつも何してるの等、沢山質問されたが適当にあしらった。


 この幼稚園の日程は十時頃に同学年で集合し、一時間の自由時間後学力に合わせたクラスに分かれ生活する。

 僕はあまり同学年とは話す時間が無いようだ。

 だが遠足や発表会等は同学年とするらしい。一般的な子は同学年と生活しているので、ちょっと羨ましい。


 「初めまして。線崎春斗です。友達を作りに来ました。これからよろしくお願いします」


 同学年への普通の挨拶を終え自由時間に入ると、すぐ数人の女の子におままごとへと連れていかれた。

 そして三股しているホスト役やらさせた。

 この子達キャラクター重すぎない?


 すると一人遠巻きから彼女役の中に好きな子が居るのだろうか、睨みつけてくる男の子が居た。

 なんかごめん。


 「ハルト私の!」

 「違う私のよ!この泥棒猫!」


 両腕を引っ張られ、あっち行ったりこっち行ったりされていたが段々と面倒臭くなってきた。


 「こんな所にいたのか親友!今日も女の子を捕まえて遊ぼうぜ」


 僕の事を睨んでいた男の子の肩を強制的に組み、部屋から出るふりをして新しい演者を手に入れた。

 女の子達の中心に男の子を入れ込み僕は、教室を出ていった。


 教室ではもみくちゃにされながら男の子が喜んでおり、ウィンウィンなので良しとしてもらおう。


 「美雪先生ひまー。ダンジョン完全攻略超上級編その十五新階層に潜ったら、見よー」


 僕は職員室に戻ってきて、タブレットで動画流しながら美雪先生の横の椅子に座った。


 「ちょっと待ってね。特進クラスの問題の答え合わせがあるから終わったら見ようね」

 「はーい」


 特進クラスとは、幼稚園の最高学年以上の学力を持っている子供達のクラスだ。

 名ばかりだが一応僕もこのクラスに入る予定だ。

 

 「貸して答え合わせ手伝う」

 「大丈夫よ。先生頑張って終わらせるから」

 「いいから」


 美雪先生は僕が答えを見ないで、答え合わせする所をハラハラとしながら見ていた。

 所々間違っている問題があったので、赤ペンで訂正して五分で終わらせ返した。


 「はい終わり。確認して」

 「あっありがとう」


 美雪先生は回答を見て、僕の採点の間違いが無い事を確認した。


 「全部合ってる。答え見てないのに。しかも訂正も完璧」

 「じゃあダンジョン完全攻略超上級編その十五新階層に潜ったら、見よう」

 「そんなに見たいんだ」


 僕は動画を美雪先生の肩と触れながら見た。これはカップルみたいじゃないか?

 幸せ。毎日こうしていたい。


 「同学年の子達と遊ばなくていいの?」

 「遊ばなくていい。美雪先生と一緒に居る方が楽しい」

 「あら!可愛いこと言っちゃって!」


 美雪先生は、嬉しそうな顔で僕を抱きしめてくれた。

 めちゃくちゃ可愛い。


 「教室で何かあったの?」

 「なんでもないよ。ただおままごとで三股したホスト役をやらされただけだよ」

 「なにそれ設定重」

 「だよねー」


 動画を見終わった時ちょうど十一時近くになっており、タブレットを閉じて特進クラスに行くことにする。


 「美雪先生そろそろ特進クラス行こう」

 「そうね行きましょうか。あれ?特進クラス受け持ってる事教えたっけ?」


 美雪先生の不思議そうな顔した。

 そんな顔も可愛いです。結婚したい。


 「特進クラスの答え合わせしてたから」

 「なるほどなるほど」


 特進クラスにはそこそこ距離のあり、職員室から反対の教室に案内された。幼稚園の規模が大きいので、教室間の距離が長くなっているようだ。


 「ここが特進クラスです。道覚えた?」

 「覚えた。忘れても案内板があるから大丈夫」

 「全部漢字なんだけどなー」


 子供には見えない高さにある、大人に向けの案内板があるので迷う事は無いだろ。

 確かに案内板が無いと、保護者でも迷子になりそうな程この幼稚園は大きい。


 「じゃあ入りましょうか。ちゃんと挨拶するのよ」

 「はーい!」


 これから一番長く一緒にいるクラスだ。仲良くできると良いな。


 「先生遅い!遅すぎる!」

 「なにごと!?」


 教室に入ると大きな声が響き、赤髪でツインテールの女の子が腕を組んで怒っていた。

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