正義の家族の日記チャンネル

 数日後お兄ちゃんの体に以上が無かった為無事退院し、精神科への通院という形で落ち着いた。

 時々会社の関係のワードで発作を起こしたりするが、何とかなっている。


 少しずつ容体も良くなり、時々フェストとの散歩に行ったり趣味のカメラを持ち出して、撮影したりしている。

 仕事で忙しく出来ていなかった動画の投稿も復活し、お兄ちゃんの家族の日記チャンネルの登録者が百万人を突破したと騒いでいた。


 詳しくは分からないが、動画投稿で食べていけば良かったのに。


 僕は知らなかったが意外と高スペックお兄ちゃんらしく、退院してから会社の人達や高校の先輩後輩が、家にお見舞いに来ることが多かった。特に女性が。

 たまにタイミング悪く鉢合わせ、修羅場みたいになり、お兄ちゃんは何故喧嘩をしてるのかわからずオドオドしていた。

 そこに僕が入り仲裁し、可愛がられるのがお決まりとなり良い仕事を貰った。

 僕も将来モテるのだろうか?

 未来視を使っては面白くないので期待しておこう。


 「お兄ちゃん!フェストの散歩行く?」

 「いくよー。カメラの準備するから待ってて」


 公園で何しようかなー。キャッチボールにでもしようかな。いや今日はサッカーにしよう。


 精神を安定させるには運動が良いらしく、全力で汗がかけるサッカーにする事にした。

 ちなみにお父さんが調べ沢山運動できるようにと、テニスのラケットやサッカーボール、野球ボール等大量に買ってきたのだ。


 僕は物置からサッカーボールを出し、ネットに入れたまま何度か蹴り時間を潰す。


 「遅くなってごめんよ」

 「また投稿するんでしょ」

 「ちゃんとお菓子あげるから。お願い!」

 「仕方ないなー」


 動画内で僕は、天才少年となっている。

 動画を数回見れば動きをだいたいトレースすることが出来るので、お兄ちゃんと運動する時に、ちょこちょこスマホで確認し遊んでいたらどのスポーツでも、大人と混じり世界を狙えるくらいまでになっているからだ。

 世界を狙える五歳児ってなに?


 そのおかげでたまに視聴者のお姉さんが、声を掛けに来る。とても良い世界だ。

 前世では地位のために、擦り寄ってくる女がいたがアイツらとは違う。

 純粋に僕を可愛がりに来てくれるのだ。ハグしてくるお姉さんもいるが……とても感謝申し上げる。


 公園に到着し、ライブ配信の為カメラをセットする。

 ライブ配信をスタートさせて、僕達は遊び始める。

 新しい技を一つ覚えて練習。お兄ちゃんと退陣練習ヒートアップして対戦形式。

 これがいつもの流れだ。

 ちなみに、ワンサイドゲームになることは絶対に無い。

 必ず僕が勝つが、だいたい七体三か八体二くらいだ。


 多分何かのスキルを持っているのであろう。

 鑑定して見ると、(トレース)と(付与)というスキルがあった。

 

 トレース

 技術は直接見ると自分の技術として使えるようになる

 魔法は体で魔法を受けると使えるようになる


 付与

 自分の技術、魔法を物に付与できる

 魔法は人に付与することも可能

 

 スキルの相性良すぎやん!

 顔も良くて強くなれるなんて、さっさとダンジョン系配信者にでもなれよ!

 それに比べて俺のスキル(?????)ってなんやねん!


 ストレスが溜まったので、ライブ配信中に乱入してきた高校生サッカー部三人を一人でボコボコにしてやった。

 スッキリした!

 最後にライブ配信の締めで、フェストのヘディングをして終わった。


 家に帰り帰宅中に買ってもらった、コンビニスイーツを食べゴロゴロする。

 お昼寝しようかな。


 お母さんは買い物で居ないのでおやつこっそり食べようか迷い、冷蔵庫を見ていると家のインターフォンが鳴った。


 お母さんが帰ってきたと思い、冷蔵庫を締めて玄関を開けると知らないおじさんが立っていた。


 「初めまして私は君のお兄ちゃんの先輩なのだけど、お兄さんが心配で様子を見に来たんだよ」

 「お見舞いですね。あがってください」


 珍しくおじさんの先輩がお見舞いに来てくれたようで家に入ってもらい、椅子に座らせ明日のおやつのケーキとコーヒーと出してお兄ちゃんを呼んだ。


 「お兄ちゃんお見舞いが来てるよ」

 「わかった。着替えるから少し時間を貰っといて」


 お兄ちゃんは散歩で着ていたラフな服装で着替えてから来るようだった。


 「おまたせしました。ふ、副社長」


 僕は大事な話だと思い、二人にして隣の部屋からこっそり覗くことにした。


 「体調の方はどうだい?」

 「家族のおかげで順調に回復しています」


 お兄ちゃんの声が少し震えているのが分かった。

 

 「実はね、今会社が大変になっている事を知っているかい?」

 「ええまぁ.....」

 「なら話が早い。君にはお願いがあるんだよ」

 「なんでしょう」

 「もうすぐ君の元には、警察が会社の事で取り調べに来ると思うのだがね、何も会社で無かった。自分のせいだと言って欲しいのだ」

 「どういうことですか」

 「もちろんタダでとは言わない」


 バックの中から封筒を取り出し、机の上に置いた。

 「この中に三百万入ってる。これでお願いできないだろうか。もちろん君には選択権がある。ただあの程度で倒れる無能な君が、三百万という大金、手に入れる事は一生ないだろう。悪いことは言わない。愚かな選択をしない事だな。決まったら電話してくれ」


 副社長は封筒を置いたまま家から出ていった。


 「お兄ちゃん大丈夫?」

 「大丈夫だよ。ちょっと体調悪くなっただけだから」

 「あの人悪い人なんでしょ」

 「うん」

 「これ」


 僕はお兄ちゃんにあるものを渡した。


 「よくやったなハルト」


 一週間後お兄ちゃんの会社は、記者会見を開くことになった。

 記者会見が始まると同時に投稿された家族の日記チャンネルの内容は、記者会見の席に座ってる副社長が、三百万を渡して全てを揉み消そうとしている動画だった。


 その日、動画配信サービスで家族の日記チャンネルが急上昇ランキング一位になっていた

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