かわいいがすべて
「線崎春人君はどこにいるかい?」
「ここに居ますよ」
先程幼稚園の説明をする為に、お母さんと別室に連れていったおじいちゃん先生が僕の名前を呼んだ。
それに反応した可愛い先生が手を挙げて誘導する。
「静かにしていたかい」
「この先生とお話してた」
「そうかそうか」
優しい顔つきのおじいちゃん先生は、ニコニコしながら頷く。
「美雪先生静かにしておったか?どうしたんじゃ!目が赤いじゃないか。何かあったのか」
可愛い先生は美雪先生という名前らしく、涙目になってる美春先生を見たおじいちゃん先生が驚いてた。
「美雪先生に何をしたんじゃ」
優しい顔から鋭く怖い顔付きに変わり、他の幼稚園生ではすぐ泣き出してしいそうな顔になる。
「違うんです!久しぶりに褒められてちょっと涙脆くなっているだけなんです」
「そうじゃったのか。すまなかった。美雪先生に悪さをしたのかと思ったのじゃ。申し訳ない」
子供の僕におじいちゃん先生は、頭を下げた。子供相手にそこまでしなくてもと思ったが、ここは相手を立てておこう。
「間違いは誰だってあるし気にしないで。おじいちゃん先生が良い人だとわかったし、もういいよ」
「ありがとのう。賢い子だ。わしはここの園長先生じゃ。これからよろしくのう」
「よろしくお願いします」
このおじいちゃん先生は、園長先生だったようだ。厳しいが優しい先生で、なかなか良い幼稚園生活になりそうだ。
「お母さんと同じ部屋行くから着いてきてくれ」
「はーい」
今度は、お母さんと一緒に居ないといけないらしく個室へ移動することになった。
「美雪先生ありがとう」
子供らしくお別れする美雪先生に手を振ってやると、過去一の笑顔で手を振ってくれた。可愛いな!結婚したい!
「今からテストを受けてもらうぞ。準備をしてきたかの?」
「テストがあるの?」
「知らなかったのか?」
いきなり園長先生にテストと言われたが、もちろん初耳なので準備などしていない。
「この幼稚園は学年じゃなくて学力を合わせて教えているのじゃ。出来ないことをさせても出来んからの。出来ることからレベルに合わせてやっていくのがこの幼稚園なんじゃよ。そして出来る子にはどんどん進めて勉強の楽しさを学んで貰うんじゃ」
この幼稚園すごくね!
普通の幼稚園は年齢に合わせて進めていくのに対して、個人の知識や技術量で合わせるという考えは、この世界におい異端すぎる。
もしかしたら僕も、更に学べる事もあるのだろうか?
「まぁ気にせんでもええ。普通の幼稚園じゃ。ただ出来る子には先に進ませ、出来ない子にはゆっくり教えるってだけじゃ。ただお母さんにはテストするって言っておったんじゃがのぉ」
「すみません。後で聞いておきます」
「いやええよ。いつも通りの方がええ」
「ありがとうございます」
お母さんは、何を考えているのだろうか。
友達を作ることしか考えてないから、テストの事が抜けていたのだろう。
園長先生の誘導され、部屋に入るとお母さんはさっきのケーキを食べていた。
「ハルトこのケーキ美味しいわよ!」
マイペースなお母さんは、口にクリームを付けて僕にケーキを差し出してくれた。
感謝し半分ほど残っていたケーキを食べ、お母さんのコーヒーで口を潤した。
「ってケーキじゃなくて!テストの事聞いてないんだけど!」
僕は説明不足のテストの事を聞いてみると、傍から聞くと辛辣な言葉が発せられた。
「あんたが何を勉強するのよ。だったら公園で遊んでる方がマシだわ」
「確かに」
園長先生は、美雪先生の時以上に驚きまた怒っていた。良い人なんだろうけど大変そうだな。
「自分の子供になんてことを言うんじゃ!可哀想だと思わんのか!今勉強出来なくても、教えていけばちゃんと出来るようになるものじゃ!」
僕の為にそこまで言わなくてもと思うほど、暑くなっていた。正義感の強い人だな。
「園長先生もういいからテストしよう」
「可哀想に。こんなにいい子じゃのに」
僕はさっさと美雪先生の所に行きたいんだ!
早くしてくれ。
「出来なくてもしっかりやるんじゃよ。精一杯やればいいんじゃ!」
「分かったらやろう」
「いつも使ってる鉛筆を出してくれ」
持ってきてないよ!お母さん持ってきてるよね!
「ごめんハルト!いつものペン忘れちゃった。このボールペンで我慢して」
渡されたのはいつも使っている、お気に入りの万年筆型のペンではなく、お母さんが使っているそこそこいい値段がする太めの多色ペンだった。五歳児にはちょっと太い。
「こんなとこまで。消しゴムも無いじゃないか。今鉛筆持ってくるから待っててくれるかの」
「これでいいからテストやろう」
面倒臭いので、園長先生が持ってるテストを奪い取った。
そして一分程度で全部書き終わりすぐに返した。
「分からないからって、最後までちゃんとしないか」
可哀想な子を相手する様に、優しく注意するがテストを見ると今日見た一番の驚きを見せた。
園長先生そろそろ倒れそうな気がする。
「ちょっと待っててくれ!まだテストがあるからの!」
おじいちゃんなゆっくりな急ぎ足で、職員室へ戻り三枚のテストを握りしめ持ってきた。
今から書くのだから綺麗に持ってきて欲しいんだけど。
「いきなり因数分解かよ!」
テストの内容は、まぁまぁな漢字や化学式に因数分解だった。
まぁまぁだが入園のテストではないな。
さっさと全てのテストを解き終わり、園長先生に渡した。
最後は大学レベルの問題があったが、かなり余裕だった。
これ以上何を学べばいいんだろう。魔法の勉強と戦闘訓練しか無いよな。
園長先生は全ての答え合わせを終え、ふらついて職員室に戻り体調が優れないとの事で、美雪先生とチェンジした。
園長先生ナイス!今度腰に回復魔法使ってあげよう。
「ハルトくんお疲れ様!頑張った?」
「全部解いたよ!」
「えらいねー!よしよししてあげる!」
「やったー」
撫でられるついでに抱きつかれてしまった。
そこまでされたら、おじさん本気になっちゃうよw
キモチワル
「テストの結果は後日、入園前に連絡させてもらいます。この後ですがお時間あるのでしたら、園内を説明させてもらいますがどうですか?」
「見よう!お母さん!」
「そんなに気に入ったの?じゃあお願いしようかしら」
そのまま園内を見て周り、特に魔法室以外
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