託した思いファミリア

 親フェンリル達は災害級のアンデット猛攻を何とか耐え、ある程度の傷を負わせ子フェンリルと僕がトドメを指すシフトがいつの間にか出来上がっていました。


 親フェンリル達は動きに無駄が少なく、淡々と受け流し圧倒的火力でダメージを与えます。

 ほとんどカバーすることがなく、まれに回復魔法で疲れを癒したり、父フェンリルは攻撃する時大振りになる癖があるので、一度魔法で一撃与え余裕を持たせるくらいです。

 モンスターでもトップの力を持つドラゴンやオークキングをあしらう姿は、まさに神の使いと言われる聖獣様でした。


 長い間戦っていると、周りには色んな種類のアンデットの残骸が山になっています。

 収納魔法を使い邪魔な全ての残骸が吸い込み、久しぶりの地面とご対面です。


 僕の今のレベルでは魔法の火力が足りないので、数体のアンデットを倒すだけで魔力が枯渇してしまいます。その為何度も魔石を割り、魔力を回復させます。


 貯蔵していた魔石が無くなりかけ始めた時、少年が再度アンデット達を召喚しました。

 ですが今回はただ召喚し攻撃させるのでは無く、少年の周りにはひざまずいたのです。

 すると躊躇ちゅうちょ無くアンデット達の首を落とします。全ての首を落とすと僕達を攻撃してたアンデット達も首を落とされに戻っていきます。


 「すごいね!アンデットドラゴンすら対処しちゃうなんて思ってもいなかったよ。それに他のモンスター達もキングばかりなのに、さすがフェンリルだね。でももう君達には飽きたから死んでもらう事にするよ」


 そう言うと少年の体はぷくぷくと溶け始めたり、筋肉が覆い始めます。

 そしてどんどんとモンスターの一部が、体に現れ始め大きくなりドラゴン等の上位種の体を持った豪華なキメラが出来上がってしまいました。


 「これが僕の全力の姿だよ」


 禍々しいしいオーラを放つようになった少年は、見にくいツギハギの目立つ人型をしていたとは思えない姿をしています。


 「色んなモンスター達の良い所を集めた最高の姿だ。魔王様にも届くであろうこの力、君達で試させてもらうよ」


 少年だったキメラは、羽を大きく羽ばたかせ鋭い風を飛ばします。風を受けた僕達は全身に切り傷を浴びてしまいます。

 そのまま太い足で踏み込み、地面を陥没させ拳を打ち込みます。


 僕達は全員後ろにある遠くの山に打ち付けられ、口から吐血し一撃でボロボロになってしまいます。


 「これが圧倒的パワーだ!グリフォンの羽のかまいたちに、オークキングのパンチ。同時に味わえる君達は幸せ者だよ」


 フェンリル家族は先程まで余裕そうだったのですが、たったの一撃で瀕死まで押し込まれてしまいました。


 「エリアヒール」


 フェンリル家族と僕は魔法で回復させ、山に埋まってしまった体を動かし這い出ようとします。

 ですがキメラの方から炎の魔法が何個も飛んできて、的確に体に打ち込まれていきます。

 逃げる事もできず、好きなように打ち込まれ高い防御を持っているフェンリル家族達も、防げなくなりやりたい放題されてしまいます。


 砲撃が終わり僕達はぐったりと、力無く項垂うなだれていました。


 「エリア、ヒール」


 再度ボロボロになりますが、回復をして傷を治します。そして治し終わると、また魔法が飛んできます。


 魔法回復魔法回復魔法回復.........

 何度も繰り返され、心が折れてしまいそうになります。

 ですがこのメンバーで回復魔法が使えるのは僕しかいないので、魔法を打たれても回復し続けます。

 何度も繰り返され回復した回数が分からなくなり、フェンリル達を見ました。

 そこには淡く光を放ち存在が薄くなっていく、親フェンリル達がいました。


 「助けてくれてありがとね。最後まで戦えなかったけど私達二人の力があればなんとかなると思うの。こんなつもりじゃなかったけど。あいつを倒して大きくなって」

 「パパママ!」

 「少年よ!ぶっ飛ばしてこい!あっちでみてるからよ!」


 父フェンリルはこんな時までガハハと大きな声で笑い、父親らしい顔をしていました。

 

 「見ててよ!絶対倒すから!」


 子フェンリルは、父フェンリルを真似て牙をむき出しにして笑います。

 そんな顔を見た親フェンリル達は戦場とは思えない、幸せな家族の雰囲気を出していました。


 「あとは頼んだぞ!二人とも!」


 親フェンリル達の体は薄くなり、漏れ出る光が大きくなり薄くなっていきます。そして最後は光の粒子になって消えてしまいました。

 

 残った光の粒子は、一箇所に集まり僕達の体内に吸い込まれていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る