子供の覚悟と父親
僕達は、降りたばかりの道を戻り戦闘音のする方向に駆け出します。
段々と音が近くなり、たどり着いた所は辺りの木々が倒されモンスターの残骸が全体に拡がっていました。
そしてその上に、見覚えのある一人の女性が立ち炎を出し燃やしていました。
「なんでここに来たの!」
その女性は後ろを振り向き、気付いてすぐ僕達の元に駆け寄り強く言い放ちました。
「ごめんママ。でも僕達も戦うことにしたの」
母フェンリルに現在の状況を説明し、皆で戦うことを了承してもらいました。
「聞きたかったのだけど、その見た目は?」
僕はずっと気になっていた、母フェンリルの人型に変化した理由を聞きました。
「私、進化したの。これは昔からの言い伝えでね。全ての生き物って進化するって言われてるの。そして進化する時って進化する対象が最も適した姿になるの。ある種族達を除いて、たまに体が大きくなったり小さくなったりするけど、大体は人型になるの。進化自体はモンスターや聖獣、精霊もどれも同じ。そこは貴方なら見覚えがあるんじゃない?」
前世でも知りえなかった新しい知識を得て、少しテンションが上がりました。
「戦うんでしょ。早く行かないと」
戦闘モードに入った母フェンリルは、ずっと気を張りつめピリピリとしています。
「いや、疲れた状態では勝てるとは思えない。だから少し休憩を取り、落ちついてから動こう。あと敬語だと疲れるから今みたいに話してね」
「はい。すみません」
僕は母フェンリルに少し意地悪を言い、興奮してる状態を抑え万全の状態を作らせます。
母フェンリルは少しシュンとしてしまいました。
少し可愛いと思ってしまいました。
人妻に手は出しませんよ!
「モンスター達の様子はどうだった?」
「恐らく見た目は普通でもすべてアンデットだと思うの。正直な所はあのような物は見たことがないので分からないね。痛覚がなく、足や腕を潰しても攻撃してくる。でもあいつらは腐敗してるわけじゃなく心臓が動いて生きている。言うならば生きたアンデットって所かな?」
母フェンリルと僕は、同じことを考えていました。ただもう少し裏があるような気がしてなりません。もっと深く探れるといいのですが。
「君よくわかったね」
近くには全く気配が無いのに、声だけが響いてきます。
そしてその幼い声に僕は聞き覚えがありました。
お返しだよ
「僕にファイヤーアローを打ち返した奴か」
「正解だよ。死んだと思ったのによく生きてたね」
「生憎しぶといもので」
「そっちに行くから待っててねー」
恐らく、このモンスター達を操っている主犯格は、僕達に話しかけてきます。
「よっこいしょ。おまたせおまたせー」
突然現れた真っ黒い穴から、小さな少年が出てきました。
警戒を解かずに、その少年からできるだけ情報が取れるよに対話をを試みます。
「転移系のスキルか魔法か」
「これも正解。君は見た目の割に詳しいね」
「見たまんまの事言っただけだ。あの結界もお前が貼ったのか?」
「それも正解。モンスターを操ってるのも僕だよ」
これで予想していた主犯格は確定しました。
そのまま少年の口は止まらず、自慢語りを続けます。
「あのモンスター達強かったでしょ。僕が手塩をかけて作った魔法で鍛えたからね。まぁ君達に壊されちゃったけど」
「それはすまないな」
「別にいいよ。あれくらいすぐ作れるから」
この少年は余程自慢したいのか、ペラペラと詳細を話してくれます。
こいつを倒す方法を考える為、そろそろ魔法の内容を教えてもらうことにしました。
「天才さんはどのような魔法を作ったんだ?」
「おー!わかっているじゃないか。見る目があるね。そんな君に教えてあげよう」
少し煽てると、テンションが上がり大事情報をばらまいてくれました。
「僕はね、元々ただのリッチなんだ。しかもめちゃくちゃ弱かったの。でもアンデットを扱う魔法に関しては一級品だった。ただアンデットは成長しないからね。どうしても増やす以外戦力増強出来なかったの。じゃあどうすれば増やす以外で強くなるのか。すぐ進化させてしまえばいいんだと気付いたよ。でも死んだら、ただのアンデットになって終わりだよね。何百年も考えてようやくこの考えにたどり着いたの。魂をだけを殺して、生身の体をアンデットにすればいいんじゃないかって。そこからは簡単だよ。精神魔法で心を殺すの。そしてアンデットにする。そこにある魔法をくっつける。それから進化するまでアンデット同士で戦わせるんだ。するとあら不思議。最強のアンデットが集まるって訳」
かなり詳しく教えてくれたようで、魔法の内容がよく分かりました。
おかげで浄化魔法を使っても、精神そのものが無いので効果がないことが分かりました。使ってみても、一瞬操作出来なくなってまたすぐに操作され復活するでしょう。
これだけでもかなりデータが取れましたが、できるだけ搾り取っていきます。
「でもそれじゃあ、お前があの結界を貼るのは無理じゃないか?」
少年は僕の言葉を聞いてニヤッとした。
「そうだよ。この魔法の肝はそこにあるんだ。さっきある魔法をくっつけるって言ったよね。その魔法は契約みたいなもので、アンデットが強くなった分だけ僕も強くなるの。さらに死んだ魂の力を僕のものにできるの。それはモンスターをアンデットにした時の魂もだけど、アンデットが人間や普通のモンスターを殺した時も一緒なんだ。だからアンデットが強くなる度に僕も強くなるの」
僕達は魔法の事を十分教えて貰いました。
対策と言える程では無いですが、できるだけ短期でとどめを刺すことが大事だと分かりました。
もうそろそろ全てを聞き出したと、思うの最後にします。
「なるほどな。それでも貰った魔法で強くなったってわけか」
「おい!どうゆう事だ!」
僕の一言で、少年のニヤニヤ顔が一瞬で真面目な顔に変わりました。
「そのままの意味だよ。その魔法借り物の力を使ったものだろ。お前程度がそんな高レベルの魔法を使えるわけが無い。多分だがそいつは死にかけてお前に力を集めるよう命令したのだろう。お前が強くなった分だけそいつも強くなるようになっている。違うか?」
僕の推測を聞いた少年はいきなり体を反らし大きく高い声で笑います。
「正解だよ。全て正解だ。僕に力を与えてくれたのは魔王様だよ。僕が信愛するお方だ。あの人の為に僕は生きている。あの人の期待に応えたい。その一心で強い力を持つフェンリルをアンデットに変えたのさ。あいつは強い。きっとあの方も喜んでくれるでしょう。そして僕はあの方の右腕となるんだ!」
少年は、急に大人びた話し方でかたりはじめました。
そして、転移してきた時と同じ真っ黒い穴を再度作り上げます。
「何故この力に気付いたか教えてもらおうか!」
「簡単な事だ。その微弱に流れてる魔力の持ち主。親愛なる魔王を死にかけに追いやったのは僕だ」
「お前ごときが魔王様に傷を負わせられるわけが無いだろう!だが知られたからにはそのままにはできない!お前達には死んでもら!行け!フェンリル!」
その声に答えるように、少し前に作った真っ黒の穴の中から一人の男性が現れ、真っ直ぐ僕達に攻撃してきます。
「パパ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます