第64話 名前のない関係3
駅からの道をゆっくり歩きながらショッピングビルに来た。
このショッピングビルにはアクセサリーのお店が二つ入っていて、一軒ずつ見に行くことにした。
値段の高いアクセサリーは買えそうになかったけど
若い人向きの安めのシリーズのものなら、ネックレスでもブレスレットでも、指輪でも。
冬休みにバイトすることも考えたら二人ぶん買える値段だったから、どれか買おうかなと思って蛍ちゃんに聞いた。
「どう? 気にいるのあった?」
「可愛いのいっぱいあるね!」
「蛍ちゃんが好きなやつ買おうよ」
「うーん……、迷うなぁ」
そのあとはもう一つのお店も見に行った。
蛍ちゃんはまた
「どうしようかなぁ。迷うー」
って言うから、一旦保留にしてお昼ご飯を食べながらどれを買うか決めようかってことになった。
◇◇
お昼ご飯にはカフェ風のお店でランチプレートを注文した。
比べる対象がないからハッキリはしないけど
今のところ、私の中ではけっこうデートっぽい一日な気がしていた。
付き合ってるってこんな感じなのかなぁ、楽しいなって思っていた。
「蛍ちゃん、どれ買うか決めた?」
ランチプレートについてくるデザートのアイスを食べ終えたあたりで
とりあえず聞いてみた。
けっこう迷っていたみたいだから私も一緒に考えようかなって。
でも返ってきた言葉は意外なものだった。
「やっぱりいらないかも」
蛍ちゃんはそう言った。
「えっ? 何で? 違うお店見に行く?」
「違うよ。可愛いのはいっぱいあったよ。そうじゃなくて、アクセサリーじゃない方がいいかもしれない」
「何で? 気が変わった?」
蛍ちゃんは家を出てから行きの電車の中でも、
「学校にはしていけないけどやっぱり指輪かなぁ。どの指かなぁ」
なんて話していたから、気が変わるにしても早い気もするけど。
「……なんか、やっぱり飛鳥ちゃんに悪いかなって」
「気にすることないよ。じゃあちょっと早いけどクリスマスプレゼントってことにしよう?」
蛍ちゃんは冬生まれだから誕生日プレゼントにしてもいい。それなら気を使わなくてすむんじゃないかなって思った。
「違うよ! そうじゃない! そうじゃなくて……」
「……どうしたの?」
「何でもない日にプレゼント貰うのもたしかに気になるよ。
でもそうじゃなくて……。
……なんかお揃いは別のものがいいなって思った」
「……私はそれでもいいけど」
蛍ちゃんがそう言うなら無理には買わないけど。
私はお揃いにするものは、蛍ちゃんが喜んでくれるものなら何でもよかった。
じゃあ、午後は適当にウィンドウショッピングを楽しもうかってことになってカフェを出た。
そして洋服とかコスメとか見て周ったあとは
夏休みにも一回来た、蛍ちゃんの好きな猫のキャラクターのグッズショップに来ていた。
お昼にカフェで話した時は、何で蛍ちゃんはあんなことを言い出したんだろうって心配したけど。
そのあとのショッピングを楽しんでいたみたいだったから、気まぐれかな?とも思った。
アクセサリーはクリスマスか蛍ちゃんの誕生日が近くなったらまた二人でゆっくり考えようかなって、私も午後は普通にショッピングを楽しんでいた。
「ねぇねぇ、見て! これ可愛い!」
二人でキャラクターのグッズを見ていると、特に気になるものがあって私はそれを手に取った。
それは猫のキャラクターではなくて。
主人公の猫の友達のペガサスのキーホルダーだった。
「飛鳥ちゃん、これ好きなんだ?」
「可愛いかも。こっちのキャット王女も可愛いけどさぁ。
このハロウィンバージョンのペガちゃんは帽子が似合っててほんとに可愛い!」
なんだかすごく自分の好みのキーホルダーで、私はちょっとテンションも高めに答えていた。
ちなみに、キャット王女は蛍ちゃんの好きな猫のキャラクターの名前で
ペガちゃんこと、ヒーラー・ペガちゃんは私が今、手にとっているキーホルダーについているペガサスの名前。
ペガちゃんはメインキャラクターではないから、置いてあるグッズも少なかった。
まあ、私もグッズを全種類集めるほど好きとかそういうわけではないけれど。
「じゃあ、これお揃いにしよっか?」
蛍ちゃんも、ペガちゃんのキーホルダーを手に取って私にそう言った。
「なんで? 蛍ちゃん、ペガちゃん好きだっけ? お揃いは別のやつがよくない?」
「別に。全キャラ好きだし。キャット王女のグッズはたくさん持ってるし、たまにはいいかなって」
「うーん、そう? じゃあ買おっかな。可愛いよねぇ、ペガちゃん!」
そうして二人で同じキーホルダーを買うことにした。
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