第61話 放課後、君の隣3
私が何も話せないでいると変わりにリリアちゃんが話してくれた。
「十二月でシューティングスターやめるの。ちょっと前には決めてたんだけど。卒業ライブはやるからよかったら見に来て」
「……十二月の何日?」
私が悲しんで泣き喚いたところでリリアちゃんに迷惑なだけだろうから
できるだけ普通にそう聞いた。
本当はそんなこと聞きたくなかったけど。
「まだ決まってないのよ。卒業のお知らせと一緒にそのうち公式サイトに出ると思うけど。いきなり聞いたら飛鳥ちゃんショックを受けちゃうんじゃないかと思って」
ああ、だからこの前のチェキ会で冬休みの話をしたらあんな微妙な表情をしたんだってやっと分かった。
冬休みにはもう会えなくなっているかもしれないし、会えたとしてもそれはもう卒業の直前ってことで。
もちろんショックだし悲しいけど、リリアちゃんは私を気にしてわざわざ早めに教えてくれたんだからあんまり悲しい顔を見せないように私は話を続けた。
「卒業した後は? 女優とか?」
「まさか。何もやらないわよ」
「何も?」
「そう。普通の大学生よ。付属の大学に進学できそうだから。まあ、無理ならまたその時に考えるわ」
「そっか」
それは薄々気づいていた。リリアちゃんから女優になりたいとかソロの歌手になりたいとか、今までそういう話を聞いたことがなかったし。
アイドルをやっている理由も「誘われたから」ってライブ中のトークで言っているのを見たことがある。
つまり、あと少しでもう本当に会えなくなるってことだった。
いつかはそうなるのは分かっていたけれど、思っていたよりもずっと胸が痛かった。
「ねぇ、飛鳥」
突然、リリアちゃんに名前を呼ばれた。
あれ? いつもは飛鳥ちゃんって言うのに今は呼び捨てだった?気のせい?
そんなことを少し考えていれば、リリアちゃんは突然よく分からないことを言った。
「そういうわけで私アイドルやめるんだから。何か伝えたいことがあったら言っていいのよ?」
「…………ん?」
「今、何か言いたいことあるんじゃないの?私以外に誰も聞いてないわよ?」
「えっと……?」
「ほら、私への気持ちとか」
自信あり気にニコニコしているリリアちゃんには申し訳ないけれどとっさに思い浮かばない。というか言っている意味がよく分からなかった。
「えっと……リリアちゃんへの気持ち?……アイドルやめないで、とか?」
私は一生懸命考えてそう言った。
「悪いけどそれはもう決めてるわ」
「だよね……」
「もっと、私たちの今後に関係する話よ」
今後って言われても。
私が引き止めたくらいで卒業がなくなったりするわけはないし。
進学とか進路のことだってリリアちゃんが決めたことだから、私が何か言うのもおかしい気がするし。
「えっと……どういうこと?」
ますます分からなくなって私は困ってしまった。
最初は笑顔だったリリアちゃんもだんだん不機嫌そうな顔になってきている。
私たちの今後……?
私から伝えたいこと……?
「飛鳥」
リリアちゃんがまた私を呼んだ。
やっぱり呼び捨てだった。
別にいいけど何で急に呼び捨て?と今、聞ける雰囲気じゃなかった。
「私とどうなりたいか考えておいて」
とリリアちゃんはちょっと怖い顔で言うので、とにかく私は勢いで返事をした。
リリアちゃんの質問が予想外過ぎて卒業のショックが一時的にどこかへ行ってしまっていた。
そのあとは少しだけ話をして暗くなるからってリリアちゃんが駅まで送ってくれた。
リリアちゃんは歩いて帰れる距離らしい。
「私ってけっこうモテるんだからね。アイドルやめて大学生になったらたくさん告白とかされるかもしれないんだから」
と帰り際にリリアちゃんは言っていた。
それはもう、リリアちゃんはめちゃめちゃモテると思うけど。
リリアちゃんとどうなりたいか……。
私は帰りの電車の中でずっと考えていた。
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