第50話 運命の出会いは二度起こる6

「じゃあ、バスで帰ろうかな」

リリアちゃんがそう言うのでバス停まで送ることにした。


校門を出てバス停までの間、リリアちゃんと話をしながら歩いた。

最初はこんなふうにチェキ会以外で会話をしていいのか分からなかったけれど、

リリアちゃんが普通に話してくれるので気にしないことにした。



たわいもない話をしているうちに目的のバス停が見えた。

中央駅に出る生徒はほとんどが電車を使うので、バス停にはあまり人がいない。

列を作って並ぶほどでもないくらい。数人がそれぞれ、少し離れた場所で携帯なんかで時間を潰しながらバスを待っているようだった。


ここのバスは本数が少ないので待たせたら悪いなぁ、なんて思いながら時刻表を見ると

ちょうどあと少しでバスが来るところだった。


「ちょうど来るみたい!よかったね」


「……そうね」

リリアちゃんはどこか浮かない表情をしていた。


最初は気のせいかなとも思ったけれど、やっぱり何か考えているような感じだった。


他校の文化祭に来て疲れたのかもしれないし、私といつまでも話してるのが嫌なのかな、とも思う。

私だって自分がアイドルで、ファンと偶然会ったり話したりしたら疲れてしまうかもしれないし。

ちょっとだけ心配になる。



そうしているうちに、一つ向こうの交差点でバスが信号待ちをしているのが見えた。


「じゃあ気をつけてね」

私はリリアちゃんにそう伝えた。

リリアちゃんの視線は私を見たままでやっぱり何かあるのかなって思う。



「リリアちゃん……?」


「何でライブ来なかったの?誕生日の日」


「え?」

驚いてすぐに言葉が出てこなかった。

「え、ごめんね。……用事があって……」


たしかに私は楽しみなんて言いながらリリアちゃんの生誕ライブに行かなかった。

もう一ヶ月も前のことだった。

誕生日の次のライブの時にも説明した気がするけど私はもう一度言った。

もっと気の利いた言い方があるんだろうけど急にそんなこと言われると思っていなくて上手く話せなかった。



「妹が、妹が風邪ひいちゃって」

少し考えてからやっと言葉が出てきたので私はそう説明した。



「そう。飛鳥ちゃんも誕生日だから来ると思ってたんだけど」


一瞬、時間が止まったかと思った。

ごめんって謝ればいいのか、誕生日を覚えててくれてありがとうなのか。

すぐには何て言っていいのか分からなくて私は黙ってしまう。



そんなに沈黙が続いたわけではないと思うけど気がついたらバスが到着していた。


「じゃあ、今日はありがとう。楽しかったわ」

そう言うとリリアちゃんはバスに向かって歩き出した。


「ごめん! 今週のライブまた行くから」



「分かってるわ」


笑ってはいなかったけど最後に少し振り返り

リリアちゃんはそう返事をしてくれた。



私はそのままバスを見送った。

バスが見えなくなってもしばらく帰る気にはなれなくて、意味もなくその場に立っていた。

何もかもが夢なんじゃないかと思って。


秋風が強くなって、それでやっと帰ろうと思った。

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