第49話 運命の出会いは二度起こる5

ホームルームが終わったらすぐに帰れるといっても、数分で終わるはずもなく。

じっと座って待ってはいたけど担任の先生の話が全く頭に入ってこなかった。


「飛鳥ちゃん、ミスコンの司会やったんだって?知ってたら見に行ったのに」

ホームルーム中、隣の席の子がそう言って話しかけてくれた。


「あはは、そうなんだよね。急に頼まれちゃって」


「ミスコンっていつもたくさん人集まるよね。すごーい!」


「いやぁ。でも私が出たわけじゃないし。進行用の台本読んでただけだから」


そういえば、そんなこともあったなって。

すごく大事件だった気がするんだけど、そのあとの出来ごとが衝撃的すぎてミスコンのことなんてほとんど頭から消えていた。


隣の席の子と小声で話しながらホームルームの終わりを待った。

終わりの号令がかかると、近くにいた子に「またね」って挨拶をして急いで教室を出た。



早くホームルームが終わったクラスの生徒が廊下に集まって話しているのを横目で通り過ぎた。

帰りが遅くなった、というほどでもないけど

あれから数十分は経ってしまっているしリリアちゃん、もう待っていないんじゃないかなとも思う。

それよりはじめから校門になんていないのかもしれないけれど。


靴を履き替えて校舎を出ると校門に向かって走った。

ずっと全力疾走は無理だったけど、校門が見えてからはけっこう本気で走ったと思う。


慣れないことをしたので息が上がってしまった。

本当にリリアちゃんが待っているなんて思わなかったけれど。


「……あれ?」


「遅いわ」

「……え、ほんとに待ってたの?」


「そう言ったじゃない」

「あれ?え、でも……、聞き間違いかなと思って」


「だったら何で走ってくるのよ」

そう言ってリリアちゃんは笑った。



私たちの横を下校する生徒が通り過ぎて行った。

他校の生徒はほとんどの人がもう帰ったと思うけど、待ち合わせなのか校門の近くにまだ何人か残っていた。


「あ、じゃあ帰り道、案内するね。中央駅方面でいい?」

いまだに「帰りに送って」の意味がよく分からないけど私はそう言った。


私ってファンなわけで、その立場でリリアちゃん家の最寄り駅を聞くのも躊躇するし

この辺りで一番大きな中央駅に出ればそこからはどの駅にもだいたい行けるので、それでいいかなと思った。


「そうね」

「乗り換えあるけど。電車が一番早いかな」


私は校門から人が流れて行く方を指して言った。

そんなに駅まで遠くないし、私に聞かなくても適当について行けば分かるような気もするけど……。

まあでもリリアちゃんが言うことだし、頼ってくれたならこたえようと思う。


「あとはバスもあるよ。本数少ないけど。乗り換えなしで行ける」


今度は駅とは反対側の、あまり人が行かないほうを指して言った。

学校帰りに遊びに行く時に乗ったことがある。たしかその時は座れるからって理由でバス通学にしている子に付き合った。


「飛鳥ちゃんは何で帰るの?」

「私、家が近くて徒歩通学なんだよね」

「えっ?」


リリアちゃんは少し驚いていた。

たしかに高校に徒歩通学ってちょっとめずらしいかもしれない。

それだけでこの学校に進学を決めたわけじゃないけれど、気に入っている理由の一つだった。

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