第47話 運命の出会いは二度起こる3
校舎裏の誰もいない自転車置き場で私は少し佇んだ。
さっきまでの体育館のステージの上にいたから
この静かな場所は居心地がいいのかもしれない。
そうはいっても、もうそろそろ下校時間も近いだろうし
早めに終わらせて教室に帰ろう。
そう思いながら、先生に言われた通りに掲示板を見れば文化祭のポスターがすぐに分かった。
たしかにけっこう風があるなぁ、なんて
そんなことを考えながら掲示板の前に立った時だった。
「なにやってるの?」
気配か声かどちらが先だったのか分からない。
反射的に振り返れば、リリアちゃんがそこに立っていた。
最初は人違いだろうと思った。
次に見間違いとか、私の幻覚を疑った。
「偶然ね」
私が固まっていると彼女はそう言った。
「え……?」
「南高だったんだぁ」
「……」
「あはは、びっくりするわよね。久しぶり、ってほどでもないけど」
「……リリアちゃん?」
どう見ても声もリリアちゃんだった。
「私もびっくりしたわ。すごい、偶然ね」
「え……」
「飛鳥ちゃん、でも会えて嬉しいわ」
「え!? え!?」
彼女は私の名前を呼んだ。やっぱりリリアちゃんだった。
セーラー服を着ていて髪はストレートに下ろしていた。
あ、文化祭に来てたのかな?と
少ししてやっとまともな考えができるようになった。
私の高校は家族や友人など外部の人間もチケットがあれば文化祭に入場することができる。
今日は祝日だし、同じ県に住んでいる同じ高校生ならそういうこともあっても不思議じゃない。
この場所で、私と会うなんてことはやっぱり信じがたいけれど。
「ねぇ、一人なの? なにやってるの?」
と。それでも目の前にいるリリアちゃんは言った。
「えっと、文化祭の実行委員になっちゃって。クジ引きで」
「へー?」
「それでポスター剥がしてきてって。委員の仕事? っていうか先生に頼まれた雑用、みたいな」
「そうなんだぁ」
本当にどうでもいい話を聞かせちゃったなと恥ずかしくなる。
それはそうと私は言った。
「リリアちゃんは……? 何で?」
「ああ、友達に文化祭のチケットもらったから」
「友達……、はぐれちゃった?」
こんなふうにライブハウス以外でリリアちゃんと話すのは初めてだった。
会話が成り立っているのか心配になりながらとりあえず話した。
見たところ、他には誰もいなかったので
友達とはぐれたりとか道に迷ったりとかなら案内したほうがいいかなって思った。
それくらいには状況が飲み込めてきた。
「ああ……友達。友達は……、先に……。……友達は用事ができて先に帰っちゃったのよ。
それより飛鳥ちゃん、さっきのあれは何?」
「さっきのって?」
「ミスコン」
「えっ!? 見てたの!?!?」
たしかにミスコンは文化祭でも一番盛り上がるし、外部の人も自由に見れるので
そういうこともあるのかもしれない。
「見てたわ。たまたまだけど急に飛鳥ちゃんが出てくるからびっくりしちゃった。
生徒会とかに入ってたの?」
「生徒会じゃないよ。委員会の仕事で急に……」
「ふぅん?」
あんまり伝わってなさそうだったけれど、たいした話じゃないから説明するのはやめておいた。
「飛鳥ちゃんが喋ってるとこずっと見てたの」
唐突にリリアちゃんが言った。
「ミスコンの時?」
「そう」
「それはびっくりするよねぇ。いきなり知ってる人がステージにいたら」
私はリリアちゃんがいるなんてぜんぜん知らなかったけど。
観客席とか見る余裕なかったし。
今の状況にちょっとだけ慣れてきて、リリアちゃんの学校はセーラー服なんだ!可愛いなぁ、なんて薄っすら思ったりしている。
いつ、どんな時に会ってもリリアちゃんはやっぱり天使のような存在。
まだ信じられないけど驚きと同じくらい、リリアちゃんに会えた嬉しさでいっぱいになっていった。
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