第46話 運命の出会いは二度起こる2

準備の時間は一時間くらいしかなかった。

体育館に入り、ステージでミスコンが始まるまでもなんとか資料を読んでだいたいの進行を頭に入れた。


人前でマイクを使って話すなんてできるか分からないけど、台本のセリフを読むだけなので頑張ればなんとかなるかなと思っていた。


そうして、ミスコンは始まった。


時間は二、三十分くらいの予定らしかった。

ミスコン自体にあんまり興味がなかったし、出場している生徒も三年生がほとんどで話したことある人もいなかった。

美人とか部活で有名とかで、違う学年でも名前は聞いたことがあるかなってくらいで。


私は体育館のステージの端に設置された椅子に座り机の上に台本を広げていた。

まずは開始の挨拶と「主催の生徒会から一言お願いします」みたいセリフを台本通りに読んで、とりあえずホッとする。


この調子であとも乗り切ろうって小さく深呼吸して私のセリフの番を待った。




「じゃ、じゃあエントリーナンバー、一番の三年A組渡辺さん、アピールタイムお願いします」

「ありがとうございました。次はエントリーナンバー二番の──」


そんな感じで5人ぶんのアピールタイムが終わって、ミスコンもあと少しで終わりというところまで来た。


私は最後に書いてある通りに投票方法の説明を読んだ。

あとはこのセリフを言い切って閉幕だった。

「投票方法は出口にある投票用紙を一人一枚受け取って──」



ちょっと言い方が慣れていなくて固いかもしれないけど、それぞれの出口に投票用紙を配る係の委員がいるので行けば分かると思う。


最後までセリフを言い切って、観客席の生徒たちが席を立ち始めるのが見えた。

これでミスコンは終わりだった。

なんとか無事に終われたと思うけどまだ心臓がバクバクしていた。



◇◇



そのあとステージ裏に行き、生徒会の人や委員長と顔を合わせた。

委員長は「ありがとう。お疲れさま」と言っていて、

他に何も言われなかったってことは、変なところはなかったってことなのかなと思う。

それならよかった。

達成感よりも無事に終われたっていう安心感が大きかった。


委員長に

「もう大きい仕事はないと思うけど、一応委員会室に顔を出してみてくれない?」

と言われたので体育館を出たその足で委員会で使っている空き教室に向かった。


文化祭実行委員がこんなに忙しいなんて知らなかった。

クジ引きで決まったから仕方ないにしても運が悪すぎる。

委員会にしろミスコンにしろ、なんか適当な理由つけて断ればよかったな。


そんなことを考えながら空き教室に行き、その手前で先生に呼び止められた。

「あ、実行委員? お疲れさま」

「はい」

「ちょっと頼めるかい?」




そうして、私は校舎裏の自転車置き場に来た。

もうすぐ文化祭も終了の時間なので、自転車置き場の前にある掲示板から文化祭のポスターを回収してきて欲しいと頼まれた。


正直、ちょっと面倒だったけど

ミスコンの司会に比べればぜんぜん楽な仕事だと思う。そこそこにやっていればその頃には文化祭も終わりが近いはずだし。

それで今度こそ自分のクラスに帰ろうと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る