第45話 運命の出会いは二度起こる1

そうして夏休みはあっという間に終わってしまった。



リリアちゃんの生誕ライブに行けなくて、後悔とかはないんだけど

リリアちゃん本人にも事前に行くって伝えていたわけだし

その辺りは次のライブの時に謝った。


妹が風邪ひいて、って言うのも妹のせいにしているみたいでなんとなく嫌だったから

「急用で行けなくて」ってことにした。まあ嘘はついていない。

ていうか、妹って青色担当の蛍ちゃんなんだけどねっていうこともまだ言っていない。

蛍ちゃん本人の意向でそのままにしてあるけど、なんかこういう時に隠し事をしている気分になる。

リリアちゃんは

「急用なら仕方ないし気にしないで」

って笑顔で言ってくれた。誕生日の日のブログのコメントも読んでくれたらしい。

リリアちゃんを推し始めてから一年経ったわけだけれど嫌なところなんか一つも見えてこない。

本当にすごい推しメンだなぁって思う。



◇◇



九月中旬。

夏休みも終わって二学期が始まり、

学校生活自体はそんなに変わり映えがしないなか、今日は私の通う南高校の文化祭の日だった。


私のクラスの出し物は展示に決まった。

事前に準備は終わっていたので当日にやることはそんなにない。

本当ならのんびり過ごせているはずなんだけど。


それとは別にクジ引きで文化祭の実行委員になってしまっていて

今、実行委員の仕事でクラスメイトと一緒に委員会で使ってる空き教室にいる。


昼食を食べ終わり午後の集合時間に合わせて教室に行けば何かざわざわしていた。


「そんな急に言われても困るよな」

「生徒会でなんとかしたらいいんじゃないの」


そんなふうに誰かが話しているのが聞こえてきた。

そうは言っても私はクジ引きで委員に決まっただけだし普段生徒会とか委員会とか全く無縁で過ごしている。

今回も雑用とか小さな仕事だけを無難にこなす気でいた。


トラブルかな?と思いながらも人ごとのように聞いて、教室の壁際でぼーっとしていると

実行委員長の二年生が急に私たちの前に立った。


「あなたたちは午後の予定は空いてますか?」

と委員長は言う。


「え?」

「クラスの当番はありますか?」

「え?うちのクラスは展示なので……」

急なことに思わず私は普通に答えてしまった。


「あなたは?」

「私、もうすぐ当番なんですぅ」

と、もう一人のクラスメイトが言っているのを見て私はものすごく後悔した。



これ、そう言って逃れないと何か面倒なことになるやつだ……って気づいた時には遅くて

「じゃあ、……山田さん?だった?お願いできる?」

「えっと……」

「スケジュールが空いてる人がいなくて。こう言う時はみんなで協力し合いましょう」

「はぁ」


委員長とその友人らしき人と数人が私の前に立ち、嫌ですって言い出せない空気がものすごく出ていた。

三年生はもう受験のために部活や委員会は引退しているので同い年のはずなんだけど、普段から生徒会とかに関わっている人はなんか迫力があった。


私は流されるように渡された資料を受け取る。

「えっ!?!?できる気がしないです」


まあ雑用とかちょっとした仕事くらいなら、どうせ暇だしやってもいいかなくらいに思っていたけど私は資料を見てさすがに声をあげた。


「みんなで助け合いましょう」

なんて委員長の人はまた言っていた。

別にできることならやってもいいけど、私に頼まれたことはミスコンの司会進行を務めることだった。


本来の司会だった生徒が、今日学校を休んでいることが午後になってから伝わったらしい。

委員長とか生徒会とかこういうの得意そうな人はみんなもう他に予定が入っているらしかった。

「台本読むだけだから」

と言われて、けっきょく断りきれないまま私は司会役を引き受けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る