第44話 家から配信した話2
そして予定の時間になった。
私は自分の部屋で配信サイトの蛍ちゃんのページを開いて配信開始を見守っていた。
「こ、こんばんはー。
シューティングスター、青色担当の蛍です」
画面が切り替わり蛍ちゃんが挨拶をしている。
自分の家のリビングをこういうサイト越しに見るのはなんとも言えない、不思議な感覚だった。
蛍ちゃんは誰もコメントしてくれなかったらどうしようって心配していたけれど始まってすぐに
『こんばんは』 『蛍ちゃん元気ー?』
そういったコメントがいくつか流れた。
私たちファンには公式サイトのお知らせ欄からメンバーの配信がある旨が伝えられていたので、
蛍ちゃんのファンは予定の時間に合わせて配信画面を開いていたんだと思う。
ほら、心配すること何もないよ!だって蛍ちゃん可愛いもん!
って、さっきまでよりは私も安心した気持ちで配信を見ることができた。
蛍ちゃんは慣れなさそうながらも、ファンの人からのコメントを順番に読んでいた。
「夏休みの宿題終わった?……えっと、まだ半分くらい残ってます。
今日は何してたの?……今日はお姉ちゃんと一緒に配信の準備したりコンビニ行ったりしてました」
もしかしなくても、お姉ちゃんって私!?と心臓が飛び跳ねそうになるのをなんとか抑えた。
自分の話題が配信サイトで話されてるなんて経験、当たり前だけど初めてだった。
この前のリリアちゃんの配信も「こんばんはー」の挨拶以外はチャットを送らずに見るのに専念していたし。
『お姉ちゃんもアイドル?』『お姉ちゃん何やってる人?』
そんなコメントをファンの人が投稿した。
ファンの人は私と蛍ちゃんが義理の姉妹って知らないわけだからそう思うのは当然なんだけど、気まずくて仕方ない。
止めてー!って心の中で思いながら配信を見守っていると
蛍ちゃんはなぜか満面の笑顔で
「お姉ちゃんですか?んー?お姉ちゃんはアイドルじゃないですよ」
って言った。
急にフフッて笑い出してどうしたの?って思うけど
その笑顔は画面越しでも可愛かった。
『最近雰囲気違うよね? 』
しばらくして蛍ちゃんはそんな投稿を読んだ。
「そうかな?うーん、でも今日は普段よりは緊張してないかも。
……いつもどうやったら人気でるのかなって思ったら何話していいか分からなくてなっちゃって。でもとりあえず楽しくやろうって思ってます」
『楽しもう』 『最近蛍ちゃん可愛い』 『笑顔可愛い』
流れていくコメントを私も嬉しい気持ちで眺めた。
そうやって蛍ちゃんの初配信は暖かい雰囲気で終わることができた。
配信終了後、リビングにいる蛍ちゃんに感想を伝えようと私は駆け足で階段を降りた。
「お姉ちゃんはアイドルじゃないですよ」って言う蛍ちゃんの言葉を思い出す。
お姉ちゃんの響きに慣れなくてなんだかくすぐったかった。
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