第40話 答えは決まったと思っていた3

次の日。

少し遅めに起きて朝食を食べる。蛍ちゃんを待ったけれどなかなか一階に降りてこなくて、最初は昨日遅くまで起きていたしまだ寝てるのかなくらいに思ってた。


お昼前くらいになって、さすがに遅いし起こしに行ったほうがいいんじゃないかって心配していたらやっとリビングで顔を合わせた。



慌てている様子もなさそうだったけど私は一応声をかけた。

「おはよう。時間大丈夫?」

「おはよ。……うん」


蛍ちゃんは明らかに元気がなさそうで、リビングには降りては来たもののテーブルには着かずに、入り口に立ったままだった。


「どうしたの?」


「今日、ライブ休む」

「えっ?」

「風邪ひいた、かも」


「えっ!?熱は!?病院行く?」

「いい。大したことないから飛鳥ちゃんは何も気にしないで」


そんなこと言われても気になるよ、って言おうとしている間に

「寝る。おやすみ」

って言ってまた2階に上がって行ってしまった。



大したことないって言われても、今後悪化する可能性もないわけじゃないし

やっぱり病院行ったほうがいいんじゃないのかな……。

でも本人がいいって言ってるしなぁ……。

どうしていいか分からなくて私は考え混んでしまった。



リリアちゃんの生誕ライブ、夕方からだから時間的には行けなくはないんだよなぁ……って、少しだけ思ってしまう。

去年はショッピングモールのイベントに出演してたけど、今年はいつものライブハウスでだから行き慣れてるしそんなに遠いわけじゃないし。


行こうと思えば行けるな……、って考えてしまうけれど。

やっぱり蛍ちゃんが体調崩してるのに一人にできるわけない。


私は一声だけかけようと蛍ちゃんの部屋に向かった。

ノックしたら

「何?」って声が聞こえたので用件だけ伝える。


「寝るって言ってたのにごめんね。私も家にいることにしたから病院行きたくなったり何かあったら呼んでね」


それだけ伝えて自分の部屋に行こうとすれば蛍ちゃんが扉から出てきた。

「病院行かないって。寝てれば治る」


「分かった。起こしてごめんね」

「 ライブ行ってよ」

「それは……もう行かないって決めたから」


「うざ。気使われるの嫌いなんだけど」

「気使ってるわけじゃないよ」


「ほんとに平気だから。絶対ライブ行ってね」

最後にそう言うとまた部屋に入って行った。



起こしてしまって申し訳なかったかなって思う。

でも病気の時に一人でいるのって心細いんじゃないかなって、余計な心配かもしれないけれど声をかけずにはいられなかった。


今日はライブには行かない。

蛍ちゃんが何て言ってもそれはもう変わらなかった。

私にできることは別にないかもしれないけれど、

寝てて体調が良くなればいいなって。

私は本当に、もしもの時のために家にいようって思った。

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