第32話 夏祭り4

二人と一緒にまずは屋台を見てまわった。

私たちは私服だったけど浴衣の人もけっこう居て

さっきまでなら、わぁ!お祭りだぁ!ってめちゃめちゃテンションがあがるところだったと思う。


「さっきの電話彼氏とか?大丈夫?」

そんな私の様子を見てか分からないけれど、麻琴ちゃんはそう言った。

「いやいやいや、彼氏じゃないよ。いないよ。さっきのは妹」


「あ〜、ちょっと前に妹できたって言ってたね。今日来てるの?」

と花音ちゃん。


「いやいや来てないよ。ただなんか……」

そこで私はふと思いとどまって続きを口にするのをやめた。

中学生の妹からあんな電話かかってくるのって、もしかして変に思われるんじゃないかなって思って。


「なんか、お祭りいいなぁって言われた」

私はそうやって誤魔化した。

二人は、可愛いねぇとか仲良くていいねとかって笑ってくれたけど

私はあんまり心から笑えなかった。


蛍ちゃんはどういう意味であんな電話をかけてきたんだろう。

きつめに言ったからさすがに一人で来るのはやめたと思うけど。

そんなことを考えだしたら気になって、気づいたらあんなに楽しみにしてたお祭りも

2人のちょっと後ろを歩くことしかできなくなっていた。



「次どうする?花火までまだちょっとあるしどこ行くか飛鳥が決めていいよ」

屋台を見ながらしばらく歩いてると、真琴ちゃんはそう言ってくれた。

「ううん、私は大丈夫だから! 二人の行きたいところ行こう」


「そう? 買いたいのあったら一緒に並ぶから言ってね」

「うん」


特にどの屋台に行くって決めてきたわけじゃないから、なんとなく歩いてるだけでも楽しかったし、それはそうなんだけど……。


「ねぇ、ちょっと妹に電話してもいいかな?」

私は二人にそう言った。



◇◇



二人には先に行ってて、と伝えて

私は電話を取り出して人の少なそうな場所に移動すると蛍ちゃんに電話をかけた。

別に今から二人と別行動しなくても良かったとは思うけど。


なんかやっぱり、妹にこういう電話するのって変に思われるんじゃないかなって思ってしまった。

嘘とかはつきたくないし、結局別れて行動してるわけだから、そこだけ取り繕っても意味ないって言えばそうなんだけど。


「蛍ちゃん?」

「うん」

「私も会いたい」

「……ほんと?」


やっぱりこんな電話、友達の横でできるわけなくて。

さすがにおかしいなって分かってたし、誘ってくれた二人にはあとで絶対もう1回謝ろうって思ってたけど。


「来るなら待ってる」

私は蛍ちゃんにそう言った。

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